本作は、2019年に開催した「拡大/縮小する美術 センス・オブ・スケール展」のために、『ガリヴァー旅行記』に着目して制作した作品です。一見するとなんの変哲もない風景ですが、よくよく見てみると、コンクリートブロックの一部が、同素材をちいさくブロック状に形成したもので充填されていることに気がつきます。かすかな差異ではありますが、それを発見した時の気持ちの揺らぎは、とても大きいのではないでしょうか。物事や事象に対する私たちの視点や見方を変化させるもののひとつが、スケールです。高田安規子・政子は、スケールをテーマにした作品によって鑑賞者を揺さぶり、見慣れた風景や常識を相対的に変化させます。
所蔵品
屋外彫刻
2007年に美術館が開館した際に、若林奮の《Valleys(2nd stage)》が海の広場に設置されました。その後美術館の敷地内に彫刻が追加され、現在は鈴木昭男、高田安規子・政子の作品も設置されています。
《Valleys(2nd stage)》
若林奮(わかばやし いさむ、1936-2003)
1989年制作/2006年設置
美術館前の道路から本館まで伸びる高さ3m、全長46mの鉄の谷。《Valleys》=「複数の谷」が示すように、1989年の制作時は、焼きなました鉄板と錆びた鉄板でそれぞれ構成した谷を2列に並べた作品でした。美術館では、塩害対策として鉄板に亜鉛メッキを施し、直列の谷として野外に設置しています。
若林奮は、1977年頃から自分と対象との間を満たす空間を把握するための「ものさし」として「振動尺」という概念を生み出します。本作について若林は、「鉄の面によって囲まれる細長い奥行きを持った場、いわば物質的な虚構に見えるものとしての『振動尺』を試みた」と語っています。
撮影:山本糾
《点 音》
鈴木昭男(すずき あきお、1941-)
2013年
本作は、野外でお茶を楽しむ茶道の「野点」にちなんで《点 音(おとだて)》と名づけられました。まわりの音に意識を向けるしかけとして設置されたプレートには、耳と足あとのかたちを合わせたマークがつけられています。《点 音》のうえに立ち、聴こえてくる音に耳をすましていると、目には見えない、その場所ならではの音の風景が立ち上がってきます。サウンド・インスタレーションともいえる同プロジェクトは、1996年ベルリンで発表されたのを皮切りに、世界30都市以上で開催されてきました。横須賀美術館の《点 音》は、2013年に開催した「街の記憶」展にて設置されたもので、音からひろがる世界へ来館者を誘っています。
《点 音》の作者であるサウンド・アーティストの鈴木昭男は、横須賀美術館の開閉館音楽の作者でもあります。横須賀のまちと横須賀美術館を感じながら、楽器を操りつくってくれたものです。鐘のような音、鯨の鳴き声のような音、遠くから聞こえる風のような音、さまざまな音がつまって一つの曲になっています。美術館の建物と共鳴しながらどう響くのか、美術館の開館・閉館の時には、目を閉じ耳を澄ましてみてください。横須賀美術館でしか聴くことのできない音が鳴り響きます。
《点 音》の作者であるサウンド・アーティストの鈴木昭男は、横須賀美術館の開閉館音楽の作者でもあります。横須賀のまちと横須賀美術館を感じながら、楽器を操りつくってくれたものです。鐘のような音、鯨の鳴き声のような音、遠くから聞こえる風のような音、さまざまな音がつまって一つの曲になっています。美術館の建物と共鳴しながらどう響くのか、美術館の開館・閉館の時には、目を閉じ耳を澄ましてみてください。横須賀美術館でしか聴くことのできない音が鳴り響きます。
《修復(中庭)》《修復(通路)》
高田安規子・政子(たかだ あきこ・まさこ、1978-)
2019年
《修復(中庭)》
撮影:長塚秀人
《修復(通路)》
撮影:長塚秀人