美術館について
美術館評価制度
横須賀美術館評価委員会(平成20年度第1回)
日時:平成21年2月23日(月)午後2時~4時
場所:横須賀美術館 会議室
1 出席者
委員会 委員長 谷口 政隆 神奈川県立保健福祉大学大学院教授
副委員長 山梨 俊夫 神奈川県立近代美術館館長
委 員 岡本 康英 (株)さいか屋取締役社長
委 員 泰井 良 (財)地域創造 振興助成課副参事
委 員 安田 直彦 市民委員
※相田真弓委員、原田憲一委員は欠席
事務局 教育委員会生涯学習部長 外川 昌宏
美術館運営課長 森山 武
美術館運営課主査(学芸員)石渡 尚
美術館運営課主査 佐々木 暢行
美術館運営課(学芸員) 沓沢 耕介
2 議 事
(1)横須賀美術館 評価制度(案)について
・目標・評価項目・評価指標について
4 会議録
[事務局より報告・資料説明]
・前回提案されたワーキンググループの活動が不調に終わったことにつきお詫び
・評価システムについて、事務局案の提示、説明
(詳細は略)
①事務局案の位置づけについて
[委員C]
・今回事務局から提示されたものは「自己点検」であり、評価システムの体をなしていない。
・自己点検をして問題の所在を明らかにした上で、使命や評価指標について時間をかけて整理しなければならないが、それがされていない。
・「評価指標」について、科学的根拠に欠けている。
・今回提示されたアンケート案は不十分であり、業務改善につながるツールになっていない。
[委員G]
・業務の改善を目指すという、評価活動の目的を明示すべき。
・問題のある部分も含めてもっとオープンにするべき。
・横須賀美術館の特長となる「福祉活動の展開」などを評価の柱とすべき。
[委員D]
・改善をめざす評価をするためというより、現状追認のための資料になっている。
・美術館が自主性をもって業務改善しようとすることに対し、阻害する要因があるのではという気がする。
②今後の進め方について
[委員C]
・自己点検を十分せず、館の姿が見えないまま評価に移行してしまうと、数値だけが一人歩きする恐れがある。もう一度、使命について考え、それに基づく戦略、目標、指標・・と順を追って自己評価のシステムを組み立ててゆくべき。時間はかかっても良い。
自己評価ができていなければ、2次評価はできない。
・事務局案を評価システムとするのではなく、自己点検として進めるのならば可である。
・評価システムは現場の職員が中心となって、業務改革のためにつくり、使うものでなくてはならない。
・事務局案は役所説明的な資料に過ぎず、是認できない。これを認めてしまうと、後から評価活動を始めようとする他館に悪影響を及ぼす恐れすらある。
・事務局案は「自己点検・試行版」としては可であるが、「自己点検」とするにももう少し手を加える必要がある。
・自己点検の次の手順として、その結果をもとにミッションを議論する。
・試行を始めることによって、ガラス張りにしたいという気持ちはよくわかる。
[委員G]
・事務局案は自己評価としてたしかに十分でない。評価委員が見て判断できるだけの情報の整理が必要。ただしそれは容易でないので、かたちが未完成であることを前提として、試行してみたほうがよい。ただし、このままでは不可である。
・次のステップとして自己点検に進むこと。その際、美術館が自主性を持つことが重要である。
[委員F]
・評価システムの構築に時間がかかりすぎては意味がないので、ある程度のところでスタートを切るべき。
・システム作りに時間がかかりすぎると、本来の目的であるはずの業務改善に手が回らなくなるのではないか。
[委員D]
・評価システムを完全なものにしようとするよりも、課題を抽出して、改善の方策を練るというような形が現実的ではないか。
・専門的な調査研究活動を進めるための時間を保証するような評価も必要。
・来館者アンケートも重要。
[事務局]
・提示した評価システムは修正の必要があることがわかった。現状を提示し、ご意見をいただきながら、よりよい制度にしていきたい。
③「使命」の位置づけについて
[委員F]
・「基本計画」など既存の方針から直接目標を立てるのではなく、それを踏まえて新たに「使命」を作り直さなくてはいけないのか?
[委員C]
・既存の方針と目標がつながっていない。既存の方針に客観性があるかどうか見直し、具体的な評価のための使命をもうけるべきであり、そのタイミングである。
・「使命」について、条例をそのまま移行させることは認められない。
・「使命」をつくるといっても、条例を無視するわけではない。
・「使命」というのに問題があれば「館長の言葉」でもよい。それぐらいの方向性を示すことも制限されるなら、館長職の意味がない。
[委員G]
・条例は抽象的なものに過ぎず、実際に適用するときに美術館の主体的な判断がなくてはならない。
[委員D]
・ミッションに相当するものとして挙げられているのは、「アクション・プラン」であってミッションとはいえないのではないか。
・館長がリーダーシップを発揮し、美術館の方向性、個性を決めてゆくべき。
[事務局]
・アンケートから、美術館の姿がある程度見えてきている。
・市外からの来館者が多く、観光施設として期待されている側面がある。
・一方で、いままで美術館になじみのなかった市民に利用を促していきたい。
④美術館職員のコンセンサス作りについて
[委員C]
・前回会議で、ワーキンググループを設けて評価システムの素案を作成することになっていたが、活動が不調に終わり残念。
・コンセンサスづくりをしないと、実質が伴わず、評価の意味がない。
・ミッションの議論については他の館でも積極的にとりくんでいる。それが出来ないという雰囲気なのはおかしい。
[委員G]
・美術館職員のコンセンサスづくりは重要だが、それを待っていては進まない。ワーキンググループや評価の試行をしていく中で、つくっていくしかない。
[委員D]
・職員が集まって話し合う機会づくりが困難なことは理解するが、それを乗り越えて機会を作ってほしい。
・自己点検、自己評価は、今後進めていけばできるはず。それを内部で共有し、(改善につなげる)さらに外部委員に役割を果たしてもらう。
[事務局]
・交替勤務のため、職員一同が集まって話し合いを持つことが難しい。
・より良い方法を模索しながら、事業を進めている状況である。
・ミッションの議論ができない状況についての問題意識はある。評価の試行を通じてその状況を打開したいと思っている。
⑤プレゼンテーションについて
[委員G]
・職員が日常的に感じていることが、評価の場で見えるようにすべき。
・データの整理方法については、専門家の助言を受けて行うのも有効。
[委員F]
・評価は具体的な活動と結びついたかたちで行わなければ、因果関係がわかりにくい。(具体的にどのような活動をするのかを評価システムの中で明示すべき)
⑥美術館の評価の全国的な現況について
[委員C]
・博物館法改正で、評価が努力規程となったこともあり、各地で取り組みがはじまっている。日本博物館協会や静岡の例にならって始めるのはよいが、いつのまにか換骨奪胎されて役所的な評価になってしまう。
・評価の手法自体が成熟していないため、大学に対してあるような評価のための第3者機関は今のところ存在しない。
・日本博物館協会では博物館・美術館の評価についての全国調査を行った。アンケート調査や、協議会を開催している館は多かったが、そうした取り組みだけでは評価とはいえない。
・同じ調査で、設置者(首長・教育委員会など)による評価活動も目立った。横須賀のケースもこれに近いが、教育委員会が直接評価をするのでなく、外部委員会を設けている点がユニークである。設置者評価にどのように現場の意見を反映させてゆくかは、今後の博物館・美術館の評価にとって大きな課題となる。
・美術館も行政機関のひとつだが、その特質、可能性について首長がよく理解していれば、現場の意思と重なってよい効果を生むことができる。
・日本博物館協会で全国の美術館・博物館の調査を反映した「自己点検web版」を作成中であり、チェック項目に答えていくと相対的な館の特徴、全国のなかでの位置を把握することができる。
[委員G]
・美術館の評価活動ははじまったばかりで、成功したかどうか判断できるだけの経験がない。
・静岡県立美術館の評価システムは美術館としては一番綿密にできている。しかし、評価にかかる作業量が膨大となって、本来業務に負担がかかっているともいわれ、見直しが始まっている。独立行政法人の評価も当初から変化しており、安定したものではない。
[委員B]
・話を聞いていると、行政的な評価以外に、美術館の主体的な自己評価への取り組みが必要だということが理解されてきた。
⑦外部委員会の役割について
[委員G]
・美術館を良くするという目的なのだから、事務局は委員会の権威を利用してでも、組織の意見をまとめてもらいたい。
・評価委員会の役割は、行政の意思と対立する場合があるが、それを乗り越えなくてはならない。
・事務局は、行政側もこちらに引き入れるような魅力のあるシステムを提案してもらいたい。
[委員B]
・組織の内部で通りにくい意見に権威を与えるのは、外部委員会としてのひとつの機能ではないか。
[委員C]
・このままでは、形式的な評価システムになってしまい意味がない。
・改善のために委員会を有効に利用してもらいたい。
[委員D]
・次期委員会では、外部評価の意義、委員会の位置づけを明確にしていただきたい。
・次期委員の役割は重要。見識のある方を選んでもらいたい。
・エクスキューズに免罪符を貼るための委員会にしてはならない。
⑧企画展の内容について
[委員F]
・企画展の内容についての要望として、斬新なものとポピュラーなものとバランスをとってやってもらいたい。
[事務局]
・展覧会については、当分の間は広い視点でもって企画していきたい。
[委員C]
・アンケートの中で、展覧会の内容についての意見を聞いてみてはどうか。
[事務局]
有名な画家の作品展を開催することはある程度可能。しかし、評価額の程度によっては、集客力や予算に限度のある当館では難しくなる。
[委員G]
・極端なことを言えば、ゴッホの名作50点で展覧会をやるとして、保険料で5億円くらい掛け捨てになる。諸経費を含めた6億円以上の経費を入場料収入でまかなおうとすれば、100万人程度の入場を見込まなくてはならないことになり、現実的ではない。
[委員C]
・国内にある名品を集めて行うというやり方もある。
・使命がきちんとしていれば、予算がないから出来ない、という説明にはならないはず。
[委員D]
・昔あったモナリザ展のように、大勢押し寄せてゆっくり見られないのでは見に行く意味がない。
[委員F]
・東京とか大都会にある館とは条件が違う。同じことをやれというつもりはない。できる範囲で検討してもらいたい。
⑨ギャラリートークについて
[委員F]
・学芸員のギャラリートークを週末に実施することに賛成。広報についても努力すべき。
[事務局]
・現在木曜日に行っている定例ギャラリートークを土曜日にすること、また、サポートボランティアに一部を委任することを検討中。また日程をホームページに載せる。
⑩広報について
[委員D]
・ポスターを貼ってもらう努力はしている?大学にも貼りたい。
[事務局]
・市内の機関、市外の関係機関などに郵送しているが、貼ってもらえないこともある。持参してお願いするなどの努力が必要。
[委員C]
・広報も戦略的に的を絞って行うべき。