美術館について
美術館評価制度
横須賀美術館評価委員会(平成22年度第1回)
日時:平成22年8月11日(水)午後3時~7時30分
場所:横須賀美術館 会議室
1 出席者
委員会 委員長 小林 照夫 関東学院大学教授
副委員長 山梨 俊夫 神奈川県立近代美術館館長
委 員 金子 雄一 観音崎京急ホテル社長
委 員 菊池 匡文 横須賀商工会議所事務局長
委 員 佐倉 美知子 市民委員
委 員 杉戸 美和 横須賀市立野比中学校教諭
委 員 水島 祐子 市民委員
事務局 教育委員会生涯学習部長 外川 昌宏
美術館運営課長 石渡 尚
美術館運営課主査 佐々木 暢行
美術館運営課(学芸員)沓沢 耕介
美術館運営課(学芸員)塙 萌衣
2.議事
(1)平成21年度の評価について
(2)平成22年度の事業計画について
3.会議録(要約版)
開会
[事務局]
生涯学習部長は途中から出席。
(新委員の紹介)
[事務局]
京急観音崎ホテル社長・松﨑委員が転任のため委員を辞されたので、替わって金子雄一氏に委員を委嘱する。
(傍聴)
[事務局]
傍聴人1名。
議事
(1)平成21年度の評価について
(配布資料の確認)
[事務局]
以下の4つの資料を配布した。
資料1「平成21年度二次評価のまとめ」各委員から提出された2次評価案をまとめたもの。
資料2「平成22年度横須賀美術館事業計画書」
資料3「横須賀美術館評価委員会設置要綱」
資料4「平成22年度横須賀美術館評価委員会委員名簿」
以上の4点に加え、既に配布した「平成21年度横須賀美術館評価報告書試行案」を適宜参照されたい。
39の項目(a.b.c.…)について、各委員からA-B-Cの評価をいただいた上で、二次評価案を示した。会議時間を短縮するため、事務局からの説明は10の目標(①、②、③…)ごとにし、それを受けて項目ごとの議論をしていただきたい。
二次評価報告書は、一次評価報告書をもとに、一次評価の後に二次評価および各委員のコメントを入れた体裁としたい。その際、同様の意見は一つにまとめ、それ以外の意見もすべて収録する。コメントはご了承があれば記名としたい。
[小林委員長]
事務局の提案に沿って進めたい。会議時間がかなりオーバーすると思われるが、ご協力願いたい。
①美術を通じた交流の促進
[事務局]
5項目について説明。
a.年間観覧者数:10万人という指標を定めた経緯については、一次評価書の中に記述した。各委員からの評価を受け、事務局としては一次評価どおりC評価が妥当と考える。ただし、複数の委員から、状況のあまりよくない中で、健闘している、というコメントをいただいた。
b.年間来館者数:一次評価書の中では、観覧者数と来館者数を別の項目にしているが、結果として両者はほぼ比例関係にある。別項目としておく意義が乏しく、再検討したいと考えている。各委員からは、周辺各施設との連携という視点からコメントをいただいた。
c.市民率:市民率については、多すぎても少なすぎてもよくないと考えている。現在までの観測から、40%に近づけることを指標としている。当年度はこれをほぼ達成しており、B評価としている。山梨委員からは、「微妙で曖昧な項目」である、これ自体を評価指標とするのではなくて、観覧者数や来館者数について考えるときの参考材料にしてはどうか、とのご意見をいただいた。
d.パブリシティの状況:菊池委員からは、専門誌にこだわらず、幅広いフィールドで露出度を向上させるべき、という意見を、金子委員からは、テレビのロケや、雑誌撮影場所に協力、タイアップして、さらに認知度の向上に努められたい、という意見をいただいた。いっぽう水島委員からは、テレビや、美術の専門誌にさらに力をいれるべき、という意見をいただいた。
e.アクセス満足度:来館者に対するアンケート中、「美術館まで迷うことなくスムーズに来られた」という設問に対し、5「そう思う」、4「どちらかといえばそう思う」と答えられた方の割合。想定していたよりもよい数値で、概ね目標を達成しているものと受け止め、B評価としている。菊池委員から、「満足度」では解りにくいので「アクセス認知度」というような言い方をしてはどうか、とご指摘をいただいた。委員会の承認があればそのようにしたい。
①-a.年間観覧者数
[小林委員長]
a.年間観覧者数についてご意見を。
[佐倉委員]
品川駅などで大きなポスターを見かけたり、イベントごとのチラシや、「おたのしみマップ」などを作成・配布していたり、広報の面での努力が認められるので、Cはつけにくく、C+とした。
[山梨委員]
全体に関わること。今まで話し合ってきた結果、A-B-Cで評価することになっているが、例えばこの年間観覧者数で、目標数が10万人以上、で実績が98,738。それを自らCだと評価する。あるいは、そういう評価基準を与えられると、評価委員もCとつけざるを得ない。その結果として、A-B-Cとある一番下の評価が外へ出ていく。これはおかしいんじゃないか。
非常に優れている場合をSとし、「じゅうぶん達成している」をA、「ほぼ達成している」をB、「さらに努力が必要」をCというS-A-B-Cの4段階のシステムとすれば、もっとこの美術館の努力が外に見えるようになると思う。そのほうが、評価することの意味を外に向かって訴える力が強くなるのではないか。
[小林委員長]
ご指摘は非常にもっともで、よく理解できる。しかし、今回の評価はA-B-Cの3段階を前提として行ったもので、あらためていまから検討するじゅうぶんな時間はない。また、評価には継続性も必要である。いま基準を変えてしまうと、読み方を変えていかなくてはならなくなる。いまのご提案については、来年度以降に活かすということではどうか?それとも、ご提案のようなやり方で見直すのがよいか?
[菊池委員]
山梨委員のご意見にはまったく同感。美術館はよく健闘している。ふつうに考えればBくらいつけてもいいと思う。にもかかわらず、決められた評価の仕方によれば、目標を達成しない限り、Bは付けられない。山梨副委員長のご提案のようにしてもらったほうが、自分の思いを反映できる。もしそれが難しいのであれば、委員会として統一したコメントのなかで、Cならばどういう性格のCなのだ、ということを明確にするべきだ。
[小林委員長]
それはかまわないでしょう?
[事務局]
問題のひとつは、数値を指標としたために、委員の方の裁量の部分がなくなってしまったこと。もうひとつは、A-B-C段階の3段階としたことであると思われる。山梨委員のご提案を反映するには、現今のCをBとCに振り分けなくてはならないが、C評価の項目はたくさんある。今回の会議でそれをするのは無理ではないか。
[小林委員長]
今後公開していく二次評価には、各委員それぞれの評価は表れず、コメントだけが表れる。いまCとなっている項目にBと入れていってしまうと、コメントを読む人は混乱する。だからCならCのままで、コメントを加える方法のほうがよいと思うのだが。
[水島委員]
私は自分がどう感じるかを基準として、よく健闘してるという意味でBにした。
表記については、今後変えていけばよい。いまは、そのまま発表するのがよいのでは。
[佐倉委員]
私も自分の感覚でC+にしてしまった。しかし、一次評価がCだったものをBに上げるということは、判定の仕方を変えることになり、比較ができなくなってしまうのではないか?市民に対しても、二次評価で評価を上げた場合に納得のいく説明がなければいけない。
[水島委員]
一次評価は奥ゆかしいという気がする。
[山梨委員]
同感。問題は3つある。ひとつは、委員の判断が反映されにくい基準が設定されていること。ふたつ目は、奥ゆかしい。美術館の活動というのは非常に社会的なものであるから、強く打ち出すべきだ。もうひとつは、積極的な訴えかけは広報にもつながる。自分たちはこんなに一生懸命やってる。だからみんなも来てください、という効果のためには、もっと積極性をアピールしたほうがよい。
評点のシステムについて。S-A-B-Cに今年から変えろというのではない。
「平成21年度評価報告書」7ページ「横須賀美術館21年度の評価について」(3)評価指標の項で、A-B-Cの意味をもっとよく説明すること。
ある項目でCという一次評価がそのまま二次評価となるとしても、そのCの意味合いについて、あるいはその項目についての、全体的なことについて、委員会全体としてのコメントが必要。その作成は事務局と委員長にやっていただきたい。押し付けるわけではないが、国の独立行政法人の評価でも、全体のコメントは事務局と委員長とで相談して決めて、委員会で了承するという手続き。委員会で協議しながら全体のコメントを作っていくのは、時間がかかりすぎる。それで二次評価を確定させていく。
S-A-B-Cは、今日の議論を踏まえて将来的な改善の余地のひとつの方向性として、考えていけばいいのではないか。
[事務局]
一次評価、二次評価までA-B-Cという3段階の評価で進めてきた経緯があるので、事務局としては、21年度の評価(試行)については、やはり3段階で作成したい。今回いただいたご意見については、22年度からの評価に活かしていく。21年度と22年度を比較するという場合には、若干組み換えが必要かと思われるが。
[小林委員長]
なかなか今からは変えられないということだ。委員会として、努力のあとを認める、といったコメントをつけることにしてはどうか。そうすれば資料も的確に読むことができる。委員会としての責任も果たせる。
S-A-B-Cの考え方は非常に重要だ。来年度以降は、この考え方が読み取れるような一次評価を作成すること。
今回の一次評価は、日本人的な、謙譲の美徳が出すぎているようだが。二次評価委員会としてはそこをきちんと読んで、二次評価委員会としての正当な評価をコメントとして載せる、ということでよろしいか?全体のコメント作成は、今日の記録をもとに、各委員の声を反映したたたき台を事務局に作ってもらい、私(委員長)が責任を持つというかたちで行う。各委員にはその後回覧し、微調整を行う、ということでよろしいか?
[一同]
了承。
[小林委員長]
ではa.年間観覧者数については、評価Cとし、プラス方向というコメントを入れることでよろしいか?
[一同]
了承。
①-b.年間来館者数
[小林委員長]
b.年間来館者数についてはいかがか。
今日はレストランに人が大勢来ている。表で、海を見ながら食事できる、ということも美術館の魅力につながる。郊外の美術館だから、複合的な魅力がなくてはならない。
[山梨委員]
「レストランのみの利用者は含まれない」とあるが、数えられないのか?
[事務局]
数字はある。平成21年度の記録では46,039人の方がレストランを利用している。
[山梨委員]
それはものすごく多い。展覧会を見た人もレストランだけの人も混ざっている?
[事務局]
その通り。レストラン利用者の動向は未調査なので、このうちどれだけの人が展覧会を見たのかは現状ではわからない。今後レストランと協議して、調査方法について検討する。
[山梨委員]
「やすらぎの場の提供」は大目標のひとつなのだから、この4万6千人を単純にプラスはできないにしても、参考データとしてはっきり示すべき。
[小林委員長]
都市型の美術館なら、何かのついでに寄るということがある。郊外型だからこそ、「トータルな魅力」が、観覧者を増やす大きな要因になる。
[菊池委員]
「恋人の聖地」として認定されていることを前面に出した、カップルを誘致できるような企画があってもよい。観音崎にあるということ、施設としての景観も含めてさまざまな要素を持ったコミュニティの場所だという魅力が加われば、相乗的に美術館としての魅力もアップするのではないか。
[山梨委員]
美術館としてうまく取り込むことができれば、可能性はある。
[金子委員]
広場や屋上も魅力がある。実際この秋には、結婚式をする。そういう可能性を秘めた場所であると思う。
[水島委員]
「海の広場」で薪能やフラなどの公演をやるとよい。そういうものは集客力があるし、観光課と協力すればできるのではないか。
[山梨委員]
観光課と協力するのは簡単なこと。でも観光課だってそんなにお金があるわけじゃない。
[佐倉委員]
「横須賀美術館おたのしみマップ」はとてもよくできていて感心している。しかし、高齢者にとってはすこし文字が小さく、読みにくい。「恋人の聖地」のことももっと目立たせたほうがよい。
[小林委員長]
今日は「海の広場」に音の出る彫刻が展示してあった。何人か叩いて楽しんでいた。他の美術館にはあまりない、広さを活かしていて、魅力を感じた。
評価はCとなっているが、各委員があげたことなどを努力目標にするとしても、頑張っているというコメントを入れることでよろしいか?
[一同]
了承。
①-c.市民率
[小林委員長]
市民率について、山梨委員から、a.ないしb.のただし書きのような位置づけにしたらどうか、という提案があるがいかがか。
[佐倉委員]
大原美術館では、3割から4割は市民の方だと聞いた。それくらい市民の方が来られると、街の雰囲気が表れ、それを市外の方にも伝えることができて良いそうだ。
[小林委員長]
この美術館は、横須賀中心部ではなく、少し離れた場所にある。同じような環境の美術館のものなど、参考となるデータはあるのか?
[事務局]
静岡県立美術館では、約80%が県民とのこと。これは県内での美術観賞の機会を確保する、という性格、使命があるため。全国から観光客を集める大原美術館では3割。美術館の性格によって市民率の基準は全く異なるし、逆に、市民率によって性格がわかる。
[山梨委員]
この美術館の場合は、できるだけ多くの市民に利用してほしいという意味でこの項目を挙げたのだろうが、率では意味がない。できるだけ市民に働きかけて、絶対数を上げていかなければいけない。そういう意味で、この項目はなじまないと思う。
具体的な数についての説明として用いるのはよい。例えば市内の小学生に来館してもらう事業なども、この意味から評価できる。多くの市民に利用してもらうための努力をするというのが目標なら、かなり高いレベルで達成されていると思う。
[事務局]
市民率は、来館者アンケートの住所の項目に対する回答者数を分母とした、市内在住と答えた方の率。市民の利用が拡大するということと、市民率が上がることとは別であり、むしろ実数が重要。しかし、実数を調べるには市民率から推計するしかない。
この指標(市民にどれだけ利用されているか)は、将来的には、市民率だけでなく、市内小学生の来館状況、市民協働事業の状況などを総合して提示し、委員の評価を仰ぐ方向に修正したい。
[小林委員長]
それがよい。市民のニーズを積極的にとり入れることは必要だが、美術館としての魅力を大きく打ち出していかないと、全体を押し上げることはできない。パーセンテージだけではなんともいえない。次回までに検討して(資料の有効性を)担保されたい。
市民率については、例えば児童展や中学生の鑑賞教室などについてのコメントを参考にして、それらを市民のニーズに応じた取り組みとして評価に加えるようなかたちで、工夫してみて、またご意見をいただいたらどうか。
[事務局]
はい。
[水島委員]
市民のなかでの美術館の認知は、まだまだ低いと感じている。今すぐにたくさんの市民に利用されるということが、美術館をよくすることになるのか、やや疑問がある。美術館が横須賀市にあるということが、市民にとって快いようにしていくためには、小学生美術館鑑賞会のような地道な普及を続けるしかない。
[佐倉委員]
来館者の実数のなかで、市民がこれくらい来ている、ということは示してもよいが、評価項目としては必要ないという意見には賛成。
[杉戸委員]
皆さんと同じように、私も市民に愛される美術館であってほしいと願う。この近辺で生まれ育ち、お花見の名所だったころをよく知っている。美術館ができるときにかなり反対があったし、市民の中にはまだ、快く思っていない人も相当いる。そういうなかでもやはり愛される努力をしていくことは必要。全体の努力と同様に、市民の利用を促す努力は必要だと思う。
[小林委員長]
市民率については、評価はBとし、いまいわれたことを入れながら全体のコメントにまとめることでよろしいか?
[一同]
了承。
①-d.パブリシティの状況
[小林委員長]
「パブリシティの状況」もBという評価になっているが。予算を見るとがんばっている感じはよくわかる。いろいろな媒体で使えるものは使っている。山梨委員は、専門家のお立場から非常にいい評価をしておられるが。
[山梨委員]
専門というわけではないが、広報には苦労している。ここは非常に良くやっていると思う。
[菊池委員]
この項目だけを見てもよくわからないが、報告書全体を見ると、かなりパブリシティの効果が挙がっていると感じられた。限られた予算のなかで、いろいろな手段を模索されているのだろう。入館者数にも大きな落ち込みがなく、健闘している。企画展にも、そういう評価が必然的に影響している。
[小林委員長]
では、このB評価の背後には、美術館側の努力がある、ということをコメントに入れることでよろしいか?
[一同]
了承。
[金子委員]
参考までに。観音崎ホテルでは取材での撮影を受け入れて、収入にもなっている。美術館にもロケーションの魅力があると思うが、女性雑誌やファッション雑誌の取材への協力態勢はできているのか?門戸を拡げておけば、PRにもなる。
[事務局]
ファッション雑誌などのロケ地としても使われており、美術館の広報につながらない場合には、「行政財産目的外使用」という名目で課金している。平成19年度には40件あったが、新奇性の衰えとともに減少傾向にあり、平成21年度には16件、1件8000円で14万3千円の収入があった。
[金子委員]
驚くほど安い。
[事務局]
建築・ロケーションには潜在的なニーズがあり、今後もより活用されるようにしたい。また、1件につき8000円という制度については、手続き等もふくめて見直そうとしている。
[菊池委員]
掲載されたり放送されたりするとき、美術館の紹介にしてくれている?
[事務局]
白い壁の手前にモデルがいる写真だけでは、紹介にならない。そういう場合にも、小さい字でも「横須賀美術館」と入れるように要望しているが、受け入れられないこともある。
①-e. アクセス満足度
(「アクセス満足度」という呼称について)
[佐倉委員]
「満足度」をやめて、「認知度」にしたほうがよい。満足しているかといわれると、不便だからあまり満足はしていない。
[菊池委員]
アンケートの設問は、誘導がしっかりしているかどうかを聞いたもので、「認知度」とするのが適切。「満足度」としてはまずありえない数値が出ている。
[事務局]
他の委員にご異議がなければ、そのように改めたい。
[小林委員長]
そのようにお願いしたい。
(駐車料金について)
[小林委員長]
馬堀海岸インターチェンジの開通が大きな意味を持つと書いてある。自動車のニーズが高まっているならば、せっかく美術館の中にある駐車場だから、1時間じゃなくて、観覧者には、2時間くらいは、サービスしてもよいのでは?観音埼灯台なども含めて楽しんでもらうならば、自家用車で来ることの意味は大きい。車を利用して、楽しめる美術館というイメージづくりを努力目標にすると、PRのしかたも変わってくる。
[石渡課長]
努力目標として必要なことと認識している。
[佐倉委員]
展覧会も面白いので、1時間では足りない。
[水島委員]
最低2時間は必要。
[事務局]
1時間でご覧ください、というつもりはない。しかし、「1時間では見られない」、「もっと割引きをしてほしい」、という来館者のご意見が出ているのも事実。まずはサービスのしかた、説明のしかたから検討したい。実際に、さらに割引ができるのかについては、美術館以外の目的で駐車をされる方の利用等も見ながら、将来的な課題として取り組みたい。
[山梨委員]
レストラン利用に対する優待はあるのか?
[事務局]
一定金額以上の利用で、段階的に割引している。
[小林委員長]
難しいかもしれないが、郊外型の美術館であるから、駐車料金負担の軽減については前向きに検討してほしい。公共交通では、馬堀海岸からバスに乗ってくるのが近いが、遅れやすい。15分くらい遅れているときもあるから、アクセスとして必ずしも好ましくはない。その意味でアクセスは限られている。
いっぽうで、青い海と山のある立体的な横須賀の自然や、周辺の施設・歴史的な遺産などと、美術館を連動させるPRをするなら、自家用車を使って、家族で来てもらいたい。その意味で、他の美術館以上のサービスを用意すれば、新しいスタイルの美術館として特化させる材料になるのではないか。
実現は難しいのかもしれないが、いま出されたいろいろな意見を、現場から提案するようなやり方も必要ではないか。
[水島委員]
いま上限1500円としている理由は?
[石渡課長]
公園の駐車場という性格があり、美術館以外の目的で駐車する人もいる。しかし、海水浴客などは午前10時の開館より前から駐車するため、繁忙期には美術館利用者が駐車できない事態も起こりうる。そのバランスを考えて設定している。
[水島委員]
美術館利用者は上限1000円とする、などの工夫はできないか?
[山梨委員]
ここは、県の公園の中に土地を借りて、市の美術館を建てたという経緯がある。それで、県の駐車場、公園の駐車場を兼ねるという条件が、建築されるときに付いているのだろう。それだと、市の判断で自由に料金設定をするわけにいかないと思う。
参考まで、県立近代美術館[葉山]では、7月8月は、駐車料金の設定を高くしている(通常期は1時間400円。7~8月は600円。7~8月の土日祝は1000円)。ただし、美術館利用者は、1時間半無料にする(観覧券所持で通常期は1時間無料。7~8月に限り1時間半無料)。普通のペースで見るなら料金はかからない。大きな差別化によって、一般車もとめられるけれども、美術館利用者優先の駐車場だという位置づけをしている。
[石渡課長]
料金設定については研究してみる必要があるが。もともと県立公園の駐車場だった土地を借りているといういきさつがある。
[水島委員]
美術館も観音崎公園の一部でしょう?美術館を見たあと、公園も散策してみたいが、時間がない。公園の駐車場を兼ねているからこそ、考えるべき。
[小林委員長]
郊外型の美術館として特化できるようなありかたを考えているということを、事務局側からの報告にいれることにしてはどうか。委員会からは、駐車料金の軽減について強い要望がある、ということを記してほしい。
②質の高い展覧会の開催
[事務局]
5項目について説明。
a.企画展集客率:企画展を目的とする来館者の割合。複数回答可のため、相対的ではなく絶対的な指数。指標の60%にわずかに満たないためC評価としたが、山梨委員からは、B評価でもよいのではないかとのご意見をいただいた。
b.企画展の満足度:企画展に対する満足について、5段階評価で5または4と回答した割合。過去3年間の調査結果から、達成可能な目標として70%を指標に設定。21年度は指標を満たしたためB評価としたい。
c.所蔵品展の満足度:b.と同様に算出。過去3年の調査結果を勘案して、b.企画展の満足度よりも指標を低く設定した。所蔵品展は企画展に比べて予算も少なく、所蔵品の範囲内で構成しているため。21年度はその指標を満たさなかったため、C評価とした。
d.谷内六郎展の満足度:別館の谷内六郎館で谷内六郎作品を紹介。世代を選ばずに楽しむことができ、遠方からの来館のきっかけともなっている。もともと満足度は高いが、若干下がってくる傾向にある。企画展と同じ70%を指標とした。
e.リピート率:多くの美術館で調査されている。アンケート回答者のうち、2回以上来館されている人の率。開館して間もないためやや低いのは当然だが、漸次上がってきた。近い将来の目標として、40%を指標とした。21年度は34%程度。山梨委員からは、この数値にはいろいろな意味があるので、評価対象ではなく、参考値として示されるべきではないか、というご意見を承った。
②-a.企画展の集客率
[小林委員長]
a.企画展の集客率は、やや指標を満たさないということでC評価となっているが、B評価でもよいのでは、という意見もある。
[山梨委員]
人数のように絶対的な数値ではないのだから。目標60%で、59.8%ならBでよいのでは?と考えた。
[小林委員長]
Cといっても、Bに近いCだというコメントをいれてはどうか?
[一同]
了承。
②-b.企画展の満足度
[山梨委員]
「21年度の取り組み」の欄に、「花」展と「コドモノクニ」展しかコメントがない。クレー展や、特にワンダーシニア展のような自主企画に対して、きちんとコメントをしておく必要がある。
[事務局]
そのようにしたい。
[佐倉委員]
阿修羅展のような、目玉となる作品を持ってくる展覧会はできないのか?
[山梨委員]
予算的に美術館単独では不可能。新聞社などとの共催ならば可能性があるかもしれないが、会場の選択は新聞社側の判断になる。こちらが主体的に選べるわけではない。 [佐倉委員]:単純に考えて、年一回くらい、山梨県立美術館の落穂ひろいのような有名な絵を展示すれば、10万人くらいすぐに達成できそう。
[山梨委員]
可能性を探ることはしてもよい。
[石渡課長]
そういう展覧会をまったく考えていないわけではないが、予算的に厳しい。他の展覧会予算を削らないとできない。
[山梨委員]
昨年度のクレー展などは、美術館側としてはそういう狙いだったのでは?
[石渡課長]
ポピュラーなものという意味では。ただ、結果として観覧者の期待に添えなかったようだ。よく知られているものを展示しない、と決めているわけではない。
[佐倉委員]
誰でも知っていて、本に載っているようなものを展示すればみんな喜ぶ。
[事務局]
展示すれば人が来るとわかっているような作品は、持ってくるのにどうしても経費がかかってしまう。それほど費用のかからないものを材料として、見る価値のある展覧会を組み立てることに努力している。
[佐倉委員]
それを評価しないわけではないが。
[水島委員]
予算がないのが問題?
[石渡課長]
考えてはいるが、例えば印象派の展覧会をしようとしても、作品にかける保険料だけでも当館の予算ではカバーできない。
[山梨委員]
100億の評価額の作品を借りるとして、およそ2500万円の保険料を掛け捨てすることになる。世界的に有名な絵なら1、2点でこのくらいになってしまう。交通の便のよいところで何十万人も集めて、何億という収入を得ないと展覧会にならない。だから、こちらもわれわれ(県立近代美術館)も、そういうことができない中でなにをやるか苦労している。
[石渡課長]
ここはやはり、土地自体そんなに集客力はない。新聞社の協力も得られない。
[山梨委員]
マンガの展覧会がはやっているが、最初は目新しくても、見境無くいろんなところでやると、とたんに入らなくなる。美術館自身の、主体的な方針を持続させていかなければ、充実した活動は長続きしない。行政からは示唆に富んだ意見をいろいろいただくけれども、企画の内容にまで口を出すようになると、美術館はダメになってしまう。
[水島委員]
「コドモノクニ」展は良かった。メジャーなものを市でするのは難しい。市でしかできないような地道な企画展を大事にしたい。
[山梨委員]
同意。歴史的にたどっていくと、当時の文化状況や、子ども像がどうなっていたのかという、さまざまな視点が出てくる。展覧会としてすごく面白い。地道な努力が展覧会の魅力につながっている。
[小林委員長]
企画展の満足度で、目標が達成されているのは、美術館の努力によるところが大きいと思うが、いかがか?
[一同]
同意。
②-c.所蔵品展の満足度
[小林委員長]
これは、CがあったりBがあったり。
[山梨委員]
3対3で拮抗している。Bにしては?
[小林委員長]
よくやっているということで、Bに近いCではいかがか?つまり、いわゆる目標どおりにすすんでいるという理解でよいか。
[一同]
了承。
②-d.谷内六郎展の満足度
[小林委員長]
これはBになっている。
「著作権者との関係修復が望まれる」とか、「いろいろ取沙汰されている問題について、行政として速やかな解決策を講じないと美術館の評価にも影響しかねないのではないか」という指摘が各委員からあるが、これはもう美術館だけの問題ではない。
[山梨委員]
「21年度の取り組み」の中で、「作家自身について、遺族の谷内六郎館への思いなどが自然なかたちで書かれ、担当者が書くあいさつ文よりも温かみがあり好評であった」とあるが、「担当者が書くあいさつ文よりも温かみがあり好評であった」という部分は不要。そう思うのなら、次には担当者がきちんと書けばよい。変に卑下することはない。
[小林委員長]
それは大事なことだ。
②-e.リピート率
[小林委員長]
リピート率もいろいろ解釈がともなうので難しい。
[山梨委員]
これは評価対象とすべきではないと思う。いっぽうで新規来館者がたくさん来てほしいという考え方もあるなら、リピート率なんて評価対象として意味がない。データとして持つのはよいが。
[小林委員長]
項目自体について再検討すべき。
③やすらぎの場の提供
[事務局]
6項目について説明。
a.館内アメニティ満足度:アンケートから算出。一次評価ではBとしたが、委員7名中4名がA評価としているため、二次評価案ではAとした。
b.スタッフ対応の満足度:アンケートから算出。一次評価ではCとしたが、各委員の評価はBを中心にAもCもある状況。これを受けて、二次評価案はBとした。
c.ミュージアムショップの満足度:前年度に比べて急落したことについて、菊池委員、杉戸委員からコメント。アンケートからは「品ぞろえが悪い」ことが要因と考えられる。これに対しては目下ポストカードの種類を増やすなどの努力をしている。
d.レストランの満足度:65%前後で目標に達していないためC評価とした。B評価の杉戸委員からは「レストラン自体の問題ではなく、周辺に食事をできる場所が少ないということが問題」との指摘があった。これに対しては混雑時のケータリングカーの営業など、実験的な努力をしている。
e.図書室の満足度:回答が少なく、満足度の信憑性についてはやや疑問。複数の委員から、場所がわかりにくい、という指摘があった。今年度に入ってから、図書室のためのポスターを作る。また、今後美術館ニュースでも紹介するなどして、認知度の向上を図る。利用者数が一万人を超えているのはとても多い、という指摘が山梨委員からあった。今後の評価では、単に満足度のみを指標とするのではなく、複数の資料を提示することで多面的に把握、判断していただくようにしたい。
f.周辺諸施設との連携:以前は「観音崎公園への滞在時間平均」という数値だったが、委員会の意見を踏まえて、複数の資料を提示した上で、周辺諸施設との連携等々の指標について判断しいただくように改めた。周辺施設との連携についてはある程度実績があるが、来館者の滞在時間、行動パターンを見る限り、「滞在型」というにはまだ至らないと判断し、C評価とした。
山梨委員からは、こうした指標では評価しにくい、連携事業を中心に考え直すべきとの指摘があった。
③-a.館内アメニティの満足度
[小林委員長]
非常に高い数値。A評価としてよいか?
[一同]
了承。
③-b.スタッフの対応の満足度
[菊池委員]
前年に比べて著しく改善されている。どのような努力をした結果なのかを聞きたい。
[事務局]
受付展示監視のスタッフに対しては、開館当初から苦情が多かった。会社を通じてきちんと説明して、トラブルが起こったときの対応、連携のしかたについては、運営課の職員へ必ず報告することを徹底させた。また、美術館らしい対応についてスタッフのための研修を行った。
[小林委員長]
21年度の取り組みによって改善が進んでいるということを含めて、Bでよいか?
[一同]
了承。
③-c.ミュージアムショップの満足度
[菊池委員]
20年度から21年度にかけて満足度が低下している。売り上げにも表れている?
[事務局]
具体的な数値はまだ挙げられない状況。現場の声としては、たいへん厳しいと聞いている。
[菊池委員]
22年度の対策はすでに講じている?
[事務局]
品揃えについての不満が多かったが、オリジナル商品のなかで、気軽に買えるポストカードの品数がかなり少なかったのは事実。これを改善するため、21年度末に行ったワンダーシニア展では、全作品64種のポストカードを作製した。所蔵品のポストカードについても、この4月以降に種類を増やした。この効果については後日検証する。それ以外の課題は見えていないのが実情。アンケート内容の分析、またショップスタッフからの情報をもとに課題を探して、美術館とショップの双方で解決を図りたい。
[菊池委員]
改善が必要なものについてはスタッフが集まって迅速に修正していく、ということがもし行われていたら、21年度はこういう結果にはならなかったのではないか。アンケートの分析には時間がかかるかもしれないが、これだけの落ち込みなら、見ていても満足度の低下はわかるはず。売り上げにもつながっているだろう。であれば、こういう問題こそそれぞれが迅速に対応し、改善をすべきであり、その効果を早く把握しなければならない。運営にはその迅速さが絶対に必要。21年度の改善点を訊いたのは、それが日常的に行われているのかを確認したかったから。
[事務局]
正直なところ、年度末に認識したというのが事実。できるところはもっと短いサイクルで改善しなければならないというのは、ご指摘のとおり。月に一度設けている、各事業者との打合せの場を活用して改善を進めたい。
[佐倉委員]
ショップに買いたいものがない。オリジナルグッズとして、谷内作品のクリアフォルダとか、スカリンの美術館バージョンストラップなどをつくってはどうか。ポストカードもよいが、子どもたちは意外にクリアフォルダなどを喜ぶと思う。発想を変えて、ここでなければ買えないものを置くべき。
[山梨委員]
この評価自体改善につながる。菊池委員、佐倉委員の発言は提言としてコメントに入れるべき。
[石渡課長]
業務委託と異なり、ショップは行政財産目的外使用であるので、こちらの意思が伝えにくい。
[山梨委員]
満足度が低下しているという事実を突きつけて、きちんと美術館側と打合せするようにもっていくべきだ。
[石渡課長]
そのようにしたい。
[小林委員長]
美術館運営課で直接、委託業者の統括管理をすることはできないのか?
[事務局]
整理すると、受付展示監視業務や清掃については、年間契約の業務委託。ミュージアムショップとレストランは、用意した場所の使用許可を与えている「場貸し」。いくつかの条件はあるが、営業については業者の裁量によるところが大きい。扱う商品のひとつひとつについて、美術館側が許可しているわけではなく、必要な時に相談をしている。売り上げが落ちれば、ショップでそれなりの努力をするはずだが、この結果を見る限りでは来館者の感覚と少しずれているのではないか。
[佐倉委員]
ショップからは行政財産使用料しか取っていないのか?。
[事務局]
厳密にいうと行政財産使用料は現在もらっていない。納める制度はあるが、前年度の経営が赤字であるため減免している。光熱費については別途おさめられている。
[佐倉委員]
普通なら行政財産使用料はかなり高額のはずでは?
[事務局]
その通り。
[佐倉委員]
経営を任せておいて、赤字だったら使用料はいらない、というのではなくて、(売れると考えられる)オリジナルの商品を売ってもらうべき。儲けさせて、行政財産使用料を当然もらう。そのほか、所蔵品イメージの使用料、ブランド料として売り上げの何%かもらうくらいにしなくては。
[事務局]
赤字でもいい、と言ってるのではなくて、黒字のときには当然使用料を徴収する。ショップ自体も黒字になるよう努力をしている。その一環としてお土産的なものを扱っている。
[石渡課長]
ミュージアムショップの独立採算というのは非常に難しい。以前勤めていた平塚市美術館では結局、請ける業者がなかった。売っている人の人件費分を稼ぐのは、地方の美術館では非常にきびしい。東京のある美術館では、業者が撤退しないように、自治体のほうから補助金を出している。
[菊池委員]
運営する側はそう思っていても、来館者にとってみれば、ショップもレストランも、美術館と一心同体。ショップへの批判は美術館への批判と同じことだ。全体ミーティングの中にもレストラン、ミュージアムショップが入っている。契約がどうこうではなく、運営全体を一心同体として良くしようとするなら、切り離して考える必要はない。悪いところをはっきり示して、改善を図ればよい。ショップもレストランも、美術館と一体との自覚を持ってほしい。自分の責任の範囲だけを考えるのではなく、全体として考える意識付けが一番大事、原点ではないか。
[小林委員長]
捉え方、考え方を変えないといけない。変えていく方向のコメントが必要だ。来館者はレストラン、ショップに個別に来ているのではなく、美術館のレストラン、ショップに来ているのだ。連絡は大変かもしれないが、美術館全体として来館者のニーズを満たす働きかけをしないと、満足は低下するし、業者にとっても不幸なことになりかねない。
[石渡課長]
了解した。近々に業者と運営課との意見の結びあわせをする。
[山梨委員]
全体ミーティングの頻度は?
[石渡課長]
月1回。
[山梨委員]
月1回やっているなら、どんどん意見交換すべき。菊池委員の指摘は非常に大事。レストランやショップに意識を持たせる前に、美術館自身が意識をもたなければ。
[石渡課長]
その通りで、私も心を入れ替えて臨みたい。
[小林委員長]
ショップは美術館と一体の組織であり、連動して取り扱われるべきとの強い意見があったという一点を付記することでよいか?
[一同]
了承。
③-d.レストランの満足度
[小林委員長]
レストランについても同じようなことがいえる。来館者は美術館のレストランという認識に立っているので、観覧者のニーズを反映する努力をしていくべきだ。
[金子委員]
観音崎京急ホテルもレストランは委託。なかなか思ったようにならないこともあるが、何度も繰り返し思いを伝えていくしかない。一度抜けられると困ってしまうので、なかなか言いたいことも言えない、という気持ちはよく理解できるが、そこを頑張ってやらなければならない。
[山梨委員]
いちばん大事なのはそういう、現場とのコミュニケーション。
[金子委員]
その通り。とにかくよく話すこと。これは非常に大事。
[金子委員]
気軽な食事や、喫茶のための場所が足りない。コーヒーだけ飲みたい、というときにレストランはやや敷居が高いように思う。子どもが騒いでも気にならないような休憩場所があるとよい。
[山梨委員]
ワークショップ室を喫茶にしてしまったら?静岡県立美術館では、こういう評価委員会での議論を経て、喫茶をつくってしまった。
[金子委員]
ワークショップ室の部分をショップにして、ショップの部分を喫茶スペースとすれば、動線としてはつながる。
[石渡課長]
ワークショップ室は重要な施設で、廃止はできない。また、喫茶をつくると、レストランの営業に悪影響を与えるおそれがある。
[山梨委員]
そうなるかどうかは、レストランとのミーティングの中でよく検討すればよい。レストランの業者がもう一つ経営する可能性もあるし。ここはそういうことを議論する場ではない。
[石渡課長]
レストランは企画展の内容にちなんだ特別メニューを企画したり、予約で席が取れないという苦情への対応など、きめ細かく、迅速に改善を進めている。4万6千人が利用したのは、その結果だと思う。
[小林委員長]
美術館のレストランだという認識がされるようなあり方を模索してほしい。
③-e.図書室の満足度
[小林委員長]
図書室には力を入れているようだ。特色としてあらわれるような工夫があるとよりよいのだが。現実には難しいのか?
[石渡課長]
そもそも場所がわかりにくいという意見が多かった。図書室の存在を知ってもらうためのポスターを館内に掲示する、美術館ニュースで特集するなど、積極的な広報に取り組んでいるところ。
[事務局]
杉戸委員のご指摘のように、難しい専門書ばかりという、敷居が高いイメージがあるようだが、子ども向けの絵本などもあり、読み聞かせのできるスペースも設けている。親しみやすい図書室というイメージづくりを心がけたい。
[小林委員長]
次年度にはその思いが表れるように取り組んでもらいたい。
[山梨委員]
図書室の利用者数は?
[事務局]
21年度は13,832人。
[山梨委員]
月平均1000人を超えており、ものすごく多い。にもかかわらず、「22年度以降の課題」に「利用者の絶対数が少ない」とあるのはおかしい。
[事務局]
この数は少しだけ立ち寄った方も含めており、利用する時間を含めて状況を勘案した。ただし、長時間利用する人は増える傾向にある。
[水島委員]
駐車料金が高いので)展覧会を見る時間も少ないのに、図書室まで見ている余裕はない。
[山梨委員]
「課題」に、「図書資料の充実」がない。収集しないのか?
[事務局]
収集はしている。
[山梨委員]
収集の方向性を明記したほうがよい。内容を充実させないと、満足度も上がらない。極端に言えば、予算が無くても図書の充実ははかれる。蔵書の処置に困っている人もいるから。
[小林委員長]
せっかくの図書室なので、特色が出せるように充実させていってほしい。
③-f.周辺諸施設との連携
[小林委員長]
周辺諸施設との連携は、この美術館の場合特に重要だ。
[菊池委員]
前回の委員会を受けて、評価に委員会の裁量を入れやすいやわらかい項目に変わった。
周辺施設との連携について、必ずしも美術館がイニシアチブをとる必要はない。総合的に見たとき、観音崎地域の価値を高めることになっていれば十分なのではないか。つまり京急ホテルの利用者が美術館を利用する、美術館に来た人が灯台にも行く、という相乗効果をもたらして、観音崎が広い層に認知されることにつながればよい。その意味で、美術館は存在するだけですでにじゅうぶんその役割を果たしていると考え、B評価にした。根底は山梨委員と同じで、評価のしようがない、評価することがおかしい、という気がしている。
[小林委員長]
観覧者が増えれば、必然的に、その意味を持つことになる。
[菊池委員]
その通り。それがあれば、とりたててこの部分を評価する必要はない。
[小林委員長]
これは来年検討しよう。
[山梨委員]
同意。
それから、評価指標を文章にした場合、あいまいになってしまう。むしろ、具体的に何をやったかということを示したうえで、それが周辺地域との連携であると同時に広報活動でもあるというニュアンスの評価項目を将来的につくっていくべきではないか。
[佐倉委員]
コメントに書いたことは、美術館が音頭をとってという意味ではなくて、地域の行事に組み込まれていれば、自然に人が集まるのではないか、という意味。
[小林委員長]
評価指標の書き方については、しかたない部分もある。そのことは次回までに検討して報告してほしい。地域の施設との連携そのものの意味を問うコメントが必要になるのではないか。評価についてはCでよい?
[山梨委員]
評価のつけようがない。
[金子委員]
「評価なし」ではどうか。
[小林委員長]
「評価できない」ということ?性格からいって、評価の判断がしにくいという認識だ、ということでよいか?それが二次評価になる。
[一同]
了承。
(5分休憩)
(この間水島委員が退席)
[小林委員長]
長時間にわたっているが、後日に再び集まることは困難なので、予定の議事については本日中に終わらせたい。ご協力をお願いしたい。
④知的好奇心の育成
[事務局]
5項目について説明。
a.企画展、所蔵品展、谷内六郎展の開催:一次評価書では、開催状況、担当学芸員の取り組みをまとめた。企画展、所蔵品展、谷内六郎展は当館の基本的な事業。概ね目標を達成しているものと見て、B評価とした。客観的判断基準が示されていない、という指摘が山梨委員からあったが、「評価指標」に文章で示しているものが基準にあたると考えている。
b.講演会・アーティストトーク等の開催:同様に、概ね目標を達成していると見て、B評価とした。
c.一般向けワークショップなどの開催:④-b.と評価に差がある理由が不明との指摘が山梨委員からあった。ワークショップ等は当館の特色となる活動として力を入れているため、A評価を主張したい。
d.学芸員によるギャラリートーク:来館者の理解を助けるうえで不可欠。じゅうぶん以上に行っているわけではないが、概ね責を果たしていると考えられるため、B評価とした。
e.学芸員による論文等の充実:図録や美術館ニュース、広報のなかで、学芸員が執筆する機会は少しある。しかし、他館等と比べて、必ずしも執筆活動が盛んとはいえず、C評価とした。
④-a.企画展、所蔵品展、谷内六郎展の開催
[山梨委員]
全体的なこと。ここからがらっと評価指標が変わる。数値的なものだけで評価できない、というのはわかるが、評価する側からいえば、一次評価をした基準が客観的に示されないと、二次評価のつけようがない。回数をこなせばいいというわけではないが、場合によっては回数でもよい。
[小林委員長]
評価基準はたしかにわかりにくい。この項目については、全体としてどうだ、というコメントが必要だろう。いま付いているA-B-C評価については、今回はこのままでよいとして、これに付帯事項としてコメントを加えるのか、あるいは、評価基準の選定から基本的に考え直すべき、とするのか。
もっと評価基準を明確にしなければ評価がしにくい、という意見があった。
それから、質なのか、回数なのかという問題もある。まだ検討の余地があると思う。
[山梨委員]
評点はこのままでよい。いま委員長の提案された「コメント」は各項目につけていったほうがいい。
[小林委員長]
では、この客観的判断の基準を、次回は明確にせよ、とするか?
[山梨委員]
それは、全体についてでよいのでは?
④あるいは④以降全部については、「21年度の取り組み」のなかの具体的な取り組みをピックアップして、ある評価に値する、とする。あるいは各委員のコメントから、そういう要素を拾い集めてくる。美術館の特色となる部分を強調するコメントとすることが重要だ。
[事務局]
④の項目全体にかかる評価指標を設定していたが、あらためて各細目の内容に沿った具体的な評価指標をそれぞれ設ける。加えて、年度の比較が可能な、数値的な資料を提示し、総合的に見ていただくように改めたい。
[山梨委員]
それは今後でよい。評価委員が評価するときに根拠となる、例えば前年度との比較ができるようなデータを入れてほしい、ということ。
[小林委員長]
では、評価はこの通りとし、その根拠については、各委員のコメントにあらわれた要素から重要なものを整理して示す、ということでよいか?
[一同]
了承。
(学芸員による論文等の充実について)
[山梨委員]
e.学芸員による論文等の充実について。一覧表をみるかぎりは、作家略歴と作品解説くらいしかない、もっと頑張って書け、という感想。
[石渡課長]
山梨委員のいわれる通り。作家略歴をこのリストに加えること自体おかしい。お叱りを受けてもしかたない。
[小林委員長]
美術館学芸員にとっては、図録に書く文章が業績として重要なものとなる、と聞いていたのでAをつけたわけだが、実際には論文として評価するほどでない文章も含んでいるようだ。自己評価基準をもっと厳密にするように要望したい。
⑤福祉活動の展開
[事務局]
4項目について説明。
当館では独特の取り組みとして、福祉の分野に重点を置いている。
「すべての人に開かれた美術館」という方針が根拠となっている項目。
a.福祉とアートをテーマとした講演会:準備室時代から、恒例として年一回実施している。21年度は27名が参加した。
b.障害児を対象としたワークショップの開催:年間12回開催している。
c.障害者施設、高齢者施設などの受け入れ:要望に応じて、養護学校の受け入れ等について配慮している。
d
.託児サービスの実施:子育て中の方も気軽に観覧できるように実施している。
以上⑤の4項目については、細目に過ぎるため、ひとつにまとめて事業報告のなかで内容を示す形にしては、という提案が山梨委員からあった。
[山梨委員]
項目をひとつにしてはどうかと提案したが、もし、「福祉活動の展開」を重点として示す意味であれば、このままでもよい。ただし、そのことをきちんと明記すること。
[菊池委員]
野比にある(独)国立特別支援教育総合研究所では、重度障害児のコミュニケーションについての研究をしている。なにか共同の取り組みをすれば、こちらの学芸員にもプラスになるのではないか。
[山梨委員]
よい提案。(独)国立情報学研究所なども、美術館と共同して情報についてのいろいろな研究をしている。
[事務局]
貴重な情報で、ありがたくうけとめている。地域の連携にもつながるので、前向きに検討したい。
[菊池委員]
ただ、固有名詞として評価書に出してよいのかどうかが心配。
[小林委員長]
(独)国立特別支援教育総合研究所「のような、専門機関と」と書けば問題ないのでは。
[菊池委員]
それなら問題ない。
[小林委員長]
よいことだと思う。障害のある人たちにとって、美術に親しむ機会は限られているし、公立の美術館としての使命があるから、前向きに取り組んでほしい。
[佐倉委員]
b.障害児向けワークショップについて、年12回も開催して、負担にはなっていないのか?対応が荒くなっているとは思わないが、きめ細かく対応するためには、もっと回数を減らしても良いのでは?
[事務局]
同じ講師の方に年12回お願いしている。年度ごとに6種類のプログラムを用意し、2周させている。口コミで応募者も多くなっており、抽選でお断りしなければならないときもある。
障害児の外での活動機会は非常に限られているため、ニーズはかなり高い。同じ方が何度も参加されるが、とても楽しみにしておられる。したがって頻繁すぎることはないはず。
[佐倉委員]
でも、それが負担になって優しさが薄れるようなことがあってはいけないと思う。
[事務局]
そうならないようにしたい。
[小林委員長]
評価はこのままとして、⑤の項目については、総合的に、横須賀美術館のひとつの特色として、積極的に展開していくべき、とコメントを入れることとしたい。
⑥学校との連携
[事務局]
4項目について説明。
a.児童生徒造形作品展の開催:20年度から実施。市内の幼稚園から高校生までの作品展。
b.小学校美術館鑑賞会の受け入れ:市立の小学校6年生が対象。鑑賞の機会を持たせるため、日程を組んで受け入れている。
c.中学生のための美術鑑賞教室の開催:市内外を問わず、美術に関心のある中学生が対象。夏休みを利用し、鑑賞のサポートをする事業。
d.研修等の受け入れ:博物館学芸員資格取得のための博物館実習、の大学生をはじめ、中学生の職場体験、高校生のインターンシップなどを要望に応じて受け入れている。
それぞれの評価については、概ねその責を果たしている、とみてB評価とした。各委員にも概ね認めていただいている。
a.児童生徒造形作品展の開催
[小林委員長]
菊池委員と杉戸委員がA評価としているが、その評価につながることについてコメントを。
[杉戸委員]
美術館を長期に借りて児童生徒の作品展をするという取り組みは、自分が知る限り、神奈川県内でも他にないのではないか。横須賀美術館の特色がよくうかがえる。美術館としてもいろいろな配慮が必要で、かなり思い切った取り組みではないか。それに対してはじゅうぶんな評価に値すると思う。
作品展のあと、野比中学校の生徒あてに、ふだんまったく交流のない衣笠小学校の児童から感想の手紙が届き、それをもらった生徒は、教師がほめたのとは比べられないくらい大きな喜びを感じていた。そうした手紙を送ろうというとても有意義な取り組みをしてくれた衣笠小の先生もすばらしいが、心の交流のきっかけをくれた美術館も大いに評価したい。そういう思いでAをつけた。
[菊池委員]
評価書の中で、この企画の及ぼす影響は大きい。杉戸委員の話からも、波及効果が高いことがわかる。参加者も、主催者も満足度が高いのならば、A評価とするべき。
[山梨委員]
非常によい試みだが、満足度が異常に高い。美術館としては、他の企画展の満足度と内容が違うということを認識しなくてはならない。違いをどう表現するかは非常に難しいけれども。「美術」というものの内実にはいろいろあって、どのような部分で感動するのかをごっちゃにしてはいけない。
[小林委員長]
他の展覧会との違いは明確にすべき。
小学校中学校という基本的な段階で、本物の絵を見ること、また、自分たちの作品が、美術館の活動にかかわっていくことは、夢として大きく膨らんでいくだろう。重要な取り組みであるということを全体のコメントで取り上げたい。評価としてはBにする。
b.小学校美術館鑑賞会の受け入れ
[小林委員長]
山梨委員はAをつけている。
[山梨委員]
県立美術館だから同じようなことを志向しているが、範囲が違うこともあって、学校単位で来てもらうことは難しい。横須賀市の場合は、学校との連絡網の構築も含めて、うまくいっていると思う。
[小林委員長]
全体として、評価Bでよいか?
[一同]
了承。
c.中学生のための美術鑑賞教室の開催
[小林委員長]
全員がBになっている。
[佐倉委員]
素晴らしいと思う。心ががさついている世の中にあって、美術に触れる、よい作品を見る、ということは、中学生にゆとりを与える。美術館の重要な機能であり、ぜひ強化していただきたい。
[小林委員長]
金子委員は僕と同じように書いている。
[金子委員]
学校とつながりを持つことは非常に大事。今後とも強化してほしい。他にはなかなかないのではないか。
[小林委員長]
あえて行政に挑戦するような言い方をするなら、福祉だけが大事でそれ以外はムダというのはおかしい。美術館がまともに機能するようでなければ、都市とはいえない。イギリスでは5万人の都市でも、美術館や図書館がある。年中子どもたちが出入りして、寝そべりながら絵を見て過ごすというところで感性が育っていると思う。美術館を「負の論理」で捉えないで、子どもを育てる「正の論理」で捉えてほしい。42万都市として積極的に考えてほしい、と重ねていいたい。
d.研修生等の受け入れ
[小林委員長]
関東学院大学でも博物館学芸員課程をつくった。どこの大学でも実習先の確保は切実な問題となっている。受け入れる学芸員から見れば仕事の差し支えになるし、面倒なことだと思うが是非継続していただきたい。
[小林委員長]
(⑥全体について)2次評価案を採用することでよろしいか。
[一同]
了承。
⑦市民との協働
[事務局]
活動の種類によって、「サポートボランティア」と「プロジェクトボランティア」の2つにわかれている。それぞれの活動状況を示して評価の材料とした。概ね活発な活動。人数が少ないのが課題であり、今後増やす努力が必要。
a.サポートボランティアの活動状況
[山梨委員]
評価指標に「ボランティアの主体性が尊重され、やりがいを持って活動している」とあるが、これでは評価のしようがない。
[事務局]
ボランティアにヒアリングした結果を、事務局として解釈して示しているので、それをもって判断材料としてほしい。
[山梨委員]
もっと客観的な判定の基準がほしい。
[小林委員長]
評価基準の表記が少しわかりにくいということは特記する。全体としてはB評価でよい?
[一同]
了承。
b.プロジェクトボランティアの活動状況
[小林委員長]
同じように評価判定の基準がはっきりしていないと、評価しにくい。それは今後の課題だと思う。委員会として、コメントの中に基準設定の問題を入れたい。全体としてはB評価でよいか?
[一同]
了承。
⑧子どもたちへの美術館教育
[事務局]
学校との関連を離れた子ども向けのワークショップおよび中学生・高校生を対象とした「アーティストと出会う会」を提示。子ども向けのワークショップには重点をおいて取り組んでおり、A評価とした。「アーティストと出会う会」は、中高生を対象とした講演会。他にない珍しい取り組みであり、A評価とした。
[山梨委員]
「珍しい」からではなく、「良い取り組みだ」、あるいはこの美術館の性格、独自性をあらわしている、ということを強調すべき。活動内容や回数はむしろ普通。
今のように羅列的にではなく、それぞれの事業が、教育普及的な分野のなかでどのように位置づけられるか、どういう性格であるか、ということを明示する。そういう意味ではもう少し項目の整理も必要。
[小林委員長]
同意だが、今回はこの枠組みのまま2次評価をしたい。
[杉戸委員]
アーティストと出会う会はとても有意義な企画。ただし、ここには、開催側から見た参加者の反応、感想しか示されていない。感想とか、受け手の反応はとても大事なので、それ自体を提示していく必要がある。これより前の項目でもそう感じた。人どうしでコミュニケーションするこうした会は、一方的でなく相互に学びあえるチャンスなので、感想を聞きだす努力をしてもらいたい。「教育普及」というと一方的な感じがするが、相手から学ぶという姿勢を大切にしてほしい。
[小林委員長]
⑧全体に通じる問題。受け手の反応をどうとり入れるのかが課題。
[山梨委員]
評価システムをつくった以上、頻繁にアンケートをとらなくては。
[小林委員長]
負担は大きいが。本来の仕事に支障が出るだろう。
[山梨委員]
定型にすればそれほど負担ではない。
[事務局]
教育普及事業についても、参加者の反応を聴取する工夫をする。方法については考えさせてほしい。
[小林委員長]
それは評価として大事なこと。全体的なコメントの中に入れる。
⑨すぐれた美術品の収集・保管
[事務局]:3項目について説明。
a.作品収集の状況:現在作品の購入予算がなく、能動的な収集がしにくいということからC評価とした。
b.保存・修復の状況:作品の保存のために、修復措置あるいは額直しをしている。必要なことを、優先順位をつけてやっているということからB評価とした。
c.所蔵作品の貸出状況:新設館ながら15件、103点の館外貸し出し(21年度実績)があり、コレクションがそれなりの評価をされていることから、A評価とした。この実績が多いのかどうか、金子委員からの質問を受けて調べたところでは、他の公立館に比べ、特に多いとはいえない。
a.作品収集の状況
[小林委員長]
資料をみると、寄贈によってだいぶ作品が集まっている。しかし、購入予算がないと余裕がなくなる。他から借りてくることができるのも、手元によい作品があればこそだと思う。
[山梨委員]
購入予算がないのは決定的にマイナス。一般に寄贈は増えており、ここでも伊藤久三郎作品がまとまって入ってきている。一見よいことのようだが、購入予算を持っていないということは、寄贈を受けるときにも、主体性を失う恐れがある。くれるのをもらうのではなくて、美術館として必要なものがあって、それが軸になって寄贈があるのだから、その「軸」をつくるためには、少しでもよいから購入予算がないといけない。何億もいらない。いま1千万円あればじゅうぶんという時代になってきてしまった。このことは、確実に、強い形で、評価の項目に入れるべき。なぜならば、市の財政に対してそのことを訴えなければならない。
[小林委員長]
その通りだ。大学の図書館も、寄贈の受け入れには慎重になっている。かえって保管することにコストがかかってしまう。必要なものと不要なものを選択するのも予算がないとできない。市に期待したい。
評価は当然ながらCとする。また、山梨委員のコメントを補足事項として加える。
b.保存修復の状況
[小林委員長]
これも(専門外なので)よくわからない。海のそばなので普通の美術館よりもたいへんなことはある?
[石渡課長]
フィルターを使うなど空調関係では対策をしている。しかし、出入り口からは潮風が入ってくるし、建物に鉄がたくさん使われていて、傷み始めているところもある。それが美術品にどのように影響するか、ということについては、まだよくわからない。
[金子委員]
観音崎ホテルでも、建物がかなりダメージを受けている。美術品に悪影響がないわけがないので、じゅうぶんな対策をしてほしい。
[小林委員長]
山梨委員から、指標を明らかにせよとのコメントがある。もし指標化するならどうするか?
[事務局]
保存修復についていえば、優先順位を判断して、必要なものから適切な処置をしていくこと。長期的な計画を立てることが目標。しかしそれを提示して、評価していただくのは難しい。
[山梨委員]
たしかに難しい。しかしいまは「適切な管理」という言葉しかない。これだけでは評価のしようがないから、難しくても評価の基準を定めて、提示してくれないと。
[事務局]
複数の要素について、前後関係なども含めて、多角的に提示するように改めたい。
[山梨委員]
昨年度は何点修復したけれども、今年は何点修復できた、とか、収蔵庫の温湿度が一年間こういうデータがとれている、とか、質的な評価を求める場合でも、いろいろなかたちでデータは出せるはず。
[菊池委員]
環境調査の結果が出ているが。
[事務局]
同様の調査を継続的に行い、経過観察をしている。これをわかりやすく提示するのには工夫がいる。
[菊池委員]
保管環境について、専門外のわれわれが評価するというのはどうなのだろう?
[山梨委員]
極端にいえば、評価できないところは空欄でよいのでは。
[菊池委員]
専門的な部分の評価をすることはできないと思ったので、そういうところは一次評価に倣って記入してしまった。山梨委員の話の妥当性と、事務局側の説明に齟齬があるかないか、というところで判断をするしかない。空欄でよいなら、判断しがたいところについては評価を出さないほうが、心苦しくない。評価者のテリトリーを限定することができるのであれば、そうしてもらいたい。
[事務局]
どの項目もつきつめればそうで、程度の問題では。一次評価の段階でできるかぎりわかりやすく示すことが必要だが、その上で「評価できない」という場合には空欄でも致し方ない。その点今後は明記したい。
[菊池委員]
そうしていただきたい。
[小林委員長]
説明がわかりにくく、評価しにくいという意見が出たことは確定版のコメントにいれる。
しかし、今回示された一時評価書はかなり細かく、充実している。自己点検や自己評価以前に、これがまとまったことがひとつの成果といえる。
次年度に向けて評点のシステムを再検討するならば、評価委員の手にあまるものは「F」にすることなどもあわせて検討いただきたい。
c.所蔵作品の貸出状況
[小林委員長]
金子委員は103件の貸出状況が多いかどうか不明、とコメントされているが。
[金子委員]
よくわからないので。
[小林委員]
よくわからないが、多いほうが良い?
[石渡課長]
展示予定があるとか、運搬に耐えられない状態とかでなければ、借用依頼に対しては基本的にすべて応じている。
[山梨委員]
佐倉委員の指摘のように、横須賀美術館を知ってもらう機会になるということをはっきり書くべき。相手が貸してくれないなら貸さなくてもよいが。
[小林委員長]
借用依頼があるということは、よい作品を持っているということ。それは評価されてよい。評価基準をはっきりさせることをコメントに入れるということでよいか?
[一同]
了承。
⑩経営的な視点をもった効率的な運営・管理
[事務局]
前回事務局からの提案として、委員会にはかったうえで今回追加したもの。運営管理全般について判断を求めることはできないので、特に効率的であるための課題として認識していることに限って、現状報告している。
a.開館日:企画展と所蔵品展の展示替え期間をずらして、休館日を月1回に限っている。どちらかしか見られない場合には、かえって不公平感につながってしまう。また、展示替えにともなう作業音は来館者のストレスとなる。来館者サービスの視点から適切ではないため、評価をCとした。
b.開館時間:6月から9月は19時まで(土曜日は20時まで)延長している。しかし、延長している時間内の来館者は少ない。人件費、光熱水費などのコストを考えると効率的ではないため、C評価を提示した。
c.財務状況:いろいろな事業を行う際に、できるだけ安い費用で、高い効果を生む努力をしている。歳出は減少傾向にある。計画的な支出をしていることから、B評価とした。
a.開館日
[小林委員長]
この辺はよくわからない。山梨委員は開館日についてよい評価をされているが。
[山梨委員]
裏返せば開館日が多いということだから。年間開館日数は280から300弱が一般的だ。347日開館するということは頑張っているという見方もできる。だが、美術館には休みが必要。安全な展示のためなど、いろいろな意味がある。さらに、ここではかえって来館者からのクレームにもなっているという。つまり条例自体が間違っている。適切な休館日をとらないと、美術館活動に無理がくる。しかし現場では条例にしたがって大きな努力をしている、その意味では高い評価に値する。
[金子委員]
340日以上開館しているのには正直驚いて、評価をひとつ上げてBとした。
[小林委員長]
現場からの本音の部分があるから、われわれから判断するのは難しい。山梨、金子両委員の意見には逆の意味もある。
[金子委員]
その通り。もう少し休んでもよいと思う。
[小林委員長]
作品を安全に運び込む、適切に管理する上でも、じゅうぶん時間をとらないといろいろな問題があるだろう。単に前年度並みということではなく、問題点を積極的に、評価委員会の場に出すべきだ。
美術館のあり方が市議会などで問われているから、配慮がゆきすぎて無理をしているのではないか。正常な運営のためにはどうすればよいか、考え直してみる必要がある。
[石渡課長]
おっしゃる通り。こちらで考えた改正案を教育委員会にはかっているところ。
[小林委員長]
山梨委員のご指摘のように、280日から300日くらいが通常ならば、長く開館していることによって起こる問題を解決する方向の努力をすべきではないか。そうしたコメントを入れることでよろしいか?
[一同]
了承。
[山梨委員]
この項目の評価は、サービス重視なのか、コスト削減重視なのか。
[事務局]
サービスの質を落とさないで、コストを落とす、ということ。
[山梨委員]
一次評価でCとなっているのは、まだ開館日が足りない、と考えているからか?
[石渡課長]
そういう意味ではない。音の出る作業は休館日に行いたい。来館者へのサービスを確保する意味で、いまよりも休館日を増やしたい、という考え。
[山梨委員]
それには賛成する。AではなくCにする。
[菊池委員]
運営側からすれば、この状況では質が保てない、ということだろう。質の向上を求める意味での開館日の改善は絶対に必要だ。ただ、いままでやってきたので、休館日の周知徹底だけは明確にしてメリハリをつけるべき。
[小林委員長]
翌年の事業計画をきちっと立てておけば、休みが月曜日以外にわたるときにも事前に周知でき、来館者にも問題はないと思う。
この評価項目の書き方のままでは、開館日が足りないからCだと思われてしまうおそれがある。
[山梨委員]
菊池委員がいわれたように、質を改めていく、ということを、評価委員会のコメントとして、強調していく必要がある。
[小林委員長]
そうすると、ここの評価はどうするべきか。Cのままでよいのか?
[事務局]
効率的な運営を目指しているので、現状では一次評価者としても、無駄が多いと考えている。
b.開館時間
[山梨委員]
開館時間をBとしていたが、今の視点にたつなら、皆さんと同じCに改めたい。
[小林委員長]
適切な開館時間は、企画の内容によっても違ってくる。次年度の事業計画を、早い時期に、どの程度立てられるのかというところにかかってくる。これにも同じようなコメントが必要。
c.財務状況
[小林委員長]
このへんも僕はよくわからない。何をもって美術館の理想的損益基準とするのかは、市民にはわかりにくい。文化事業をやって、公共から税金が支出されるのはいってみれば当たり前で、どんなに努力しても、4億、5億という経費をまかないきれるわけはないのだから、損益という視点でみたら全然ダメということになる。それにかわるなにか基準がないと判断できない。山梨委員は、美術館長としていろんな状況をご存知だから、非常に良好だ、とおっしゃるが、その他の委員は、判断しにくいと思う。どうしたらよいのか?
[菊池委員]
私はお話を聞いて衝撃を受けた。損益で見る人のほうが普通では?資料では歳入と歳出が分かれていて、「差し引き」という考え方が全くない。それにもおどろいた。
[佐倉委員]
市の行政改革推進委員もつとめている。市では一般財源の予算を削減するために事業仕分けをしようとしている。美術館はその対象に入っていないが、一般財源の負担額がすこしでも軽くなる方向にしていかないと、指定管理者制度のような話が出てくる恐れがある。指定管理者制度が美術館にふさわしいのかどうかという話はここでも出たが、よくわからないので不安だ。
うまくいかないとなんでも外に出すというのはよくない。やはり、公共で、市でやるから意味があるものもある。そうしないためには、一般財源のムダを極力削減する。たとえば光熱水費を削るとか、行政財産の貸出料をもらえるようにするとか、そういう努力をしなければ、削られる対象になってしまう。
先ほどのショップの話のように、何らかの収入増をはからないと、収支の差が毎年積み重なっていくということはなかなか許されない。ぜひ改善しなければならない。
[菊池委員]
「質を落とさない経費削減」「運営の効率化」のふたつはセットになっている。評価するためのひとつの基準でもあり、運営者にとって日常的な指標となっていなければいけない。「質を落とさない」というのは重要で、やみくもに減らしてはいけない。そのためには一定の基準や目標値がないといけない。収入ももちろんだが、収入に対する人件費の割合とか、支出に占める広告費の割合といった、基準を運営面で持っていないと、各人が違う概念を持ってやっていくと絶対にうまくいかない。評価する側だけでなく、運営する側もそこを認識して、評価報告書の中にはっきりとうたえるようになれば。
[小林委員長]
ふつうの美術館ではこうだという、きちんとした事例がないとわかりにくい。特に横須賀では専門家でない委員が審議しているから、金が使いすぎだ、どうだという感覚だけで話がされていくと、今度はすぐに、合理化だ、外部委託だと進んで、精神が全くなくなってしまう恐れがある。このあたりをきちんとしていかないとうまくいかない。
[事務局]
前回いただいたご意見を反映して資料をつくったところだが、正直なところ一次評価者としても、うまく提示できていないと思う。申し訳ない。
菊池委員のご指摘はごもっとも。今後、理想的損益基準を示せるかどうかはなんともいえないが、年度ごとの推移を示して、収入は増やし、サービスを維持しながら支出は減らす、あるいは同等に抑える。あるいは、支出が増えるならばその分のサービスを向上させるという考え方は必要と考える。具体的な数値としてはなんともいいきれない。また、その判断をしていただくについては、努力した中身を示していくしかない。
評価は公表されるものなので、公開できるだけのことは公開し、その上で疑問をもたれた方に対しては、真摯にお答えしていくしかない。これは赤字なんだ、と見られないような表示のしかたは必要かもしれない。
[小林委員長]
基本的に、行政が持ち出さなければならないもの。だからこそ、その説明がきちんとなされないといけない。単なる貸借対照表のようなものだけでは、議論が一人歩きする恐れがある。同程度の美術館について、具体的な収支の例があり、これが健全な状態、というひとつの考え方が示されないといけないのではないかとは思う。
委員各位は好意的に受け止めているので、現実的に見て健全だという評価が成り立つと思うが。
[山梨委員]
他の美術館の例を出して比較することは有効。比較的良くやっているのだから。
[石渡課長]
私見だが、美術館には個性があり、他館との比較には難しいところもある。周辺人口や、ロケーション、大都市との距離などいろいろな要素があって単純には比較できない。そのなかで基準を問われると困ってしまうが、効率的にやっていることについては自負がある。
以前調べたときには、だいたい人件費を除いた美術館予算と歳入の比は、歳入が予算の5%から20%というのが一般的な地方美術館。なかには、5%にも達しないところもある。
[小林委員長]
それがわかっていればよいが、わからない人が多いので、具体的な事例を挙げてほしい。わからない人が見たら、歳出だけが突出して見えて、とても受け入れられない。そんなに厳密でなくてもよいから参考となる事例があれば、山梨委員の話も説得力が出てくる。評価としてはBでよろしいか?
[一同]
了承。
[小林委員長]
とても時間がかかってしまったが、重要なことなのでお許し願いたい。
たいへんだと思うが、一度整理したものが委員の方に見てもらえるようお願いしたい。
(2)平成22年度の事業計画について
[事務局]
(資料2 平成22年度の事業計画の説明)(略)
[小林委員長]
22年度の事業計画が前年度とどのように違うのか、どこに主眼を置いて事業計画をつくったのか、整理して示されているとよかった。
[山梨委員]
各事業の件数が示されたが、これは22年度の評価をするときの基準になりうる。
4 その他
(今後の日程)
[事務局]
次回開催は11月としたい。
評価報告書については、事務局が修正したものを次回会議より前にご確認いただいて、確定する。
内容は、
1 今年度の中間報告
2 評価システムの修正案について審議
としたい。
日程は追って調整する。
(指定管理者制度の導入について)
[山梨委員]
前回会議で出た指定管理者云々の件はどうなっているか?
[事務局]
前回、指定管理者制度についての議論をこの委員会で行ってほしいとお願いしたことがあった。
現在は、指定管理者制度の導入について、運営条件の分析、他都市の美術館の状況の調査をしている段階。
[山梨委員]
それは美術館だけでなく、横須賀市として公共施設一般の運営を指定管理者に移行しようとする動きの一環なのか?それとも美術館のみをターゲットにしているのか?
[事務局]
市のなかですでに指定管理者制を導入している施設もある。市全体として、導入できるところはするという意向。
[山梨委員]
指定管理者制度をつくった総務省自身が、全国の美術館がなぜ指定管理者制度を志向するのか戸惑っている。つまり総務省としては美術館を想定していない。美術館には向かない制度だと思っていたら、全国の自治体がわーっと飛びついてきてしまった。
僕は全国美術館会議の副会長と、同時に美術館運営制度研究部会の部会長をつとめている。指定管理者を受け入れてしまうと、それが美術館にそぐわない実情があっても、制度そのものを美術館側から変えていくわけにはいかない。だから、それを見直す、ということが全国で行われている。
見直しの一番大きい点は、競争入札制をやめて、指定入札のようにする。つまり指定管理者制度そのもの継続性を保証していくために、一般公募をしない。
財団が運営していたところを、一般公募しても、結果として、財団以外のところが、美術館運営について請けたところは非常に少ない。島根県立美術館、広島県立美術館、長崎県歴史文化博物館が挙げられるくらい。しかも、島根県、広島県は美術館運営の一部、たとえば広報について、たとえば島根県はサントリーパブリシティサービスが入っている。
それ以外はほとんど、今まで運営していた第3セクターや財団が、指定管理者になった。その指定管理者になった財団を、その体制を維持していくためにどうすればいいかの見直しをいまどこも行っている。
たとえば、東京都写真美術館では、福原義春館長自身が音頭をとって見直しを行っている。いっぽうで、乃村工藝社だとか、指定管理者を請けていた民間のほうが、引き上げようとしている。つまり、指定管理者になっても、儲からない。全然負担が多い。
そういう状況で、横須賀市が、直営を指定管理者にするとして、誰が請けるのか。なにか受け皿となる団体を考えているのか?
[事務局]
今のところそこまでは考えていない。その制度を導入してメリットがあるのかどうか、まず調べている。
[山梨委員]
メリットは要するにコストの問題だけ。横浜美術館が指定管理者制度になったとき、もともと運営していた財団(横浜市芸術文化振興財団)が請けたが、競争相手が出ることを想定して、展覧会にかかる経費を1億円減らした。ふたを開けたら競争相手はいなかった。存在しない競争相手のために、よい展覧会がやりにくくなってしまった。
まずは事例をよく調べたほうがよい。そのために全国美術館会議の運営制度研究部会に連絡してくれれば、もっと具体的なことを知っている人たちを紹介する。
この委員会でもいわれていたように、指定管理者制度は、そのままの形では全然美術館には向かない。
(生涯学習部長あいさつ)
(閉会)