美術館について

美術館評価制度

横須賀美術館評価委員会(平成21年度第3回)

日時:平成22年3月9日(火)午後3時~5時
場所:横須賀美術館 会議室

1 出席者
委員会 委員長  小林 照夫 関東学院大学教授
    副委員長 山梨 俊夫 神奈川県立近代美術館館長
    委  員 菊池 匡文 横須賀商工会議所事務局長
    委  員 佐倉 美知子 市民委員
    委  員 杉戸 美和 横須賀市立野比中学校教諭
    委  員 松﨑 正良 観音崎京急ホテル社長
    委  員 水島 祐子 市民委員
    事務局  教育委員会生涯学習部長 外川 昌宏
         美術館運営課長 奥田 幸治
         美術館運営課主査 石渡 尚
         美術館運営課主査 佐々木 暢行
         美術館運営課(学芸員)沓沢 耕介
         傍聴者 1名

2.議事
(1)平成21年度の一次評価(試行案)及び二次評価について
  ①評価確定までのスケジュール(案)
  ②一次評価(試行案)について
  ③二次評価の実施方法について
(2)事務局よりの提案

3.会議録(要約版)
(傍聴について)
[事務局]
この会議は公開されており、傍聴人が一名いる。

(資料の確認)

(評価のスケジュールについて)
[事務局]
平成21年度の一次評価について、年度明けに着手し、確定したのち、5月中旬を目途に委員に提出する。委員は、一次評価をもとにそれぞれ二次評価を作成、事務局あてに送り、事務局ではそれをまとめて二次評価結果書(案)を作成する。これを各委員あてに送り、検討していただいたうえ、6月に会議を行う。 6月の会議では、各委員の二次評価をもとに議論していただき、委員会としての二次評価を確定していただく。

(一次評価書の形式について)
[事務局]
お渡しした資料は、点検項目、評価指標の一覧(概要)と、それぞれの項目についての解説を加えた本書、データや事業報告書等の資料の3部にわかれており、2番目が評価書の本書にあたると考えている。 評価は項目ごとにABCの3段階で示している。標準をBとし、よい結果のものをA、さらに努力が必要なものをCとしている。 数値目標については、実数のほか、アンケートに基づく満足度の指標をとりいれ、70%をB評価としている。 質的評価が必要なものについては、それぞれの事業の報告書などを参考資料としている。

(二次評価の実施方法)
事務局が作成した一次評価書をもとに、各委員は二次評価案を作成。それをまとめたものをたたき台として、次回の会議で委員会としての統一した二次評価を確定していただく。 本日の会議では、こうした進め方でよいかどうかについてのご意見を伺いたい。 あわせて、数値的な評価指標の設定のしかたが妥当かどうか、ということについても検討していただきたい。今回は試行だが、一度確定してしまえば、数年間は同じ基準で評価していきたい。

(数値目標の根拠の明示)
[山梨委員]
数値目標の根拠が評価書のなかに示されていない。(満足度の)目標が70%となっているが、その根拠についての説明がない。また、(年間観覧者)10万人という基準の根拠も示されていない。評価委員は主観的な見当でしか発言できないのだから、ある数値が妥当かどうかの論議をこの場ではできない。美術館の側から、なぜ、それが適当であると考えたのか、その根拠を示す必要がある。
(事務局の説明を受けて)
いまの説明が妥当であるかどうかはともかく、公開されるときに、根拠についてきちんと説明できることが必要だ。それでも疑問を持つ人は持つだろうが、とにかくやる必要がある。
[小林委員長]
山梨委員のご指摘は非常に大切。同じような評価基準について、一般にはどうなっているのか。あるいは、この横須賀美術館では、前年度の数値を基準にするというなら、そのことを明確にしておくべき。

(満足度設定のの根拠について)
[事務局]
満足度については、立ち上げ時の委員会でも話題になり、そのときは結局、基礎データが存在しないために、どの程度の数値が妥当なのかわからない、ということになった。現今は、3年分のアンケート調査結果がデータとして存在する。満足度は展覧会によっても異なるが、企画展の平均値をもとに、(達成しうる目標として)70%を妥当な数値として提案する。これは、皆様に親しまれる展覧会である、というために必要最小限の数値であると考えている。 従前は項目ごとに基準値を変えていた(所蔵品展ならば65%、谷内六郎展ならば80%、というように)のだが、全体を見渡すときにはかえって不都合であるため、今回の提出案では「満足度については70%を基準とする」ように統一した。
[山梨委員]
それはそれで良い。前年度を少しでも上回りたい、という努力目標が常にあるとして、ひとつの目安として70%の満足度が、どういう判断にもとづいて設定されているか、という説明が必要。 例えば、アンケートの性格はこうで、70%を目安とする統計的な数値がある、とか、他の美術館の評価の基準はこうなっている、というようなことを加味しながら、この美術館ではどう考える、ということが、この70%をひとつの目安にすることの説明に含まれていればよい。
[松﨑委員]
満足度を用いた指標については、目標はあくまでも100%にすべき。レストランにしろ、スタッフ対応にしろ、美術館として70%でいいと思ってる、という態度ではおかしい。美術館としては当然100%をめざしたうえで、その結果が70%、60%であったときのわれわれ(評価委員)の評価、をあわせて指標とするべきだと思うがどうか?
[事務局]
非常に厳しいご意見。例えばレストランなら、お客様の多い時期には混んでいて入れなかったという方が出る。その方の満足度は下がる。人気が高いゆえに下がってしまう、ということがある。価格設定でも、人によって高いと感じたり、相応だと感じたりする。もろもろ考えると、100%というのは、目標値としては現実的でない。 展覧会の内容にしても、季節感にあったもの、わかりやすいものから地元の作家のもの、などいろいろ工夫しているが、それ以外に、ご覧になる方の嗜好によるところも大きいということがある。本来そうあるべきとは思うが、100%という目標値は厳しいのではないか。
[松﨑委員]
私はそうは思わない。(サービスを)提供している以上は、お客さんに満足してもらわなければならない。じゃあ70%の努力でいいの?ととらえられても困るので、やはり目指すのは100%であるべき。 もちろん、現実にはアンケート調査で100%はまず無理。だけど、その提供する側が、「70%でいいんだ」では理屈にあわないと思う。そう思うのは私だけではないはず。
[水島委員]
展覧会の満足度を100%にするのはやや無理があると思うが、少なくとも「やすらぎの場の提供」の項目については100%を目指すのが基本ではないか。
[事務局]
ご意見ごもっとも。ご参考に2点ばかり申したい。 繰り返しになるが、満足度70%という目標値は、いままでの調査結果に照らして、達成可能なものとして設定していること。 もう1点、「満足度」というのは、個人の満足の度合いを示すものではなくて、全体の中の何%が「満足」「まあ満足」したかを示す指標。すなわち、たくさんの人がやや満足する場合には高値となる。多くの人にはぴんと来ないが、一部の人は深く満足している、という場合には、満足度は高くならない。美術展のように、人による価値観の違いを反映しやすいものについては、100%満足する、というようなことはまずありえない。 逆にサービス面、特にアメニティ満足度、アクセス満足度などは、(すでに)80%以上になっている、これは限りなく100%に近づけるべき性質のものと思われる。 今回(満足度の指標について)ひとしなみに70%としたのは、結局総体としてABC評価にするので、指標を統一したほうが、全体のなかでどこが強くどこが弱いのかわかりやすい、という発想から。項目ごとに指標を設定していったほうがよい、という委員のご意見が多いならばそのように修正したい。
[菊池委員]
「館内アメニティ満足度」と「スタッフ満足度」は、やはり限りなく100%に近づけるべき。70%の結果で、30%の人が不満なのに、Aなのはおかしい。 また、おもてなしの心を持ってサービス業をする以上は、それぞれの人たちが100%を目指して、そこに向かって、0.1%でも努力をしていくという趣旨が必要。

(観覧者数の目標の根拠について)
[山梨委員]
観覧者数の目標が10万人でもかまわないが、なぜ10万なのかを明示すべき。 行政的な、立ち上げ時の目標値ではなくて、3年、4年経って、統計をとった結果から予測しうる(現実的な)数値を美術館として掲げるべき。 はっきりいえば、こういう世の中だから、どんなことやっても、どんなにお金かけてもどんどんお客は減る。目安を適正なものにしておかないと、やがて現実とかけ離れたものになってしまう。そうすると、観覧者数の確保だけではない、他にもたくさんある美術館としての仕事がいかに大事なのか、訴えかけることができなくなってしまう。 もちろん、適正な数について、美術館として考えるだけでは済まなくて、行政全体で考えたときとの差については調整が必要だろう。その議論のためにも、10万人という数字についての根拠が必要。
[小林委員長]
資料を見ると、谷内館については、オープンの年よりも昨年は満足度が落ちている。その落ちたほうの数値をとって、それより少し高ければよしとする、というのでは説明がつきにくい。 年間観覧者数の基準については、例えば横浜市には360万人の人口がある、というとき、横浜美術館にはどのくらいの集客力があるのか、また、MM21 のような地域とは違う、よりローカルな立地についても考えあわせて、適正な数値を考えたほうがよい。 行政の目標は科学的な根拠にもとづいていなくてはならない。そうでないと、社会的なマイナス要因によっても苦しむことになる。 特に市民にアピールするときは、活動の内容よりも、来館者数が重要なポイントになってくる。最近は、地方自治体は行政の合理化を基準に評価する傾向が強い。美術館が市民に与える効果や価値ではなくて、数が来ていれば成功だ、という数の論理で物を考えられたときに大変厳しくなると思う。 年間観覧者目標について。これは美術館設立以前からの計画数値。地域人口、美術館の規模が同程度である公立美術館のデータを参考に設定した。目標値として10万人と設定したけれども、開館初年度には(話題性の効果で)お客様も16万人超となった。翌20年度も、ほぼ10万人超の実績となった。展覧会ごとの目標値の合計としての、10万数千人という年度目標については、ほぼクリアできている。しかし、今年度は率直に言って10万人については瀬戸際といったところ。逆にいうならば、計画目標の10万人に縛られている。 横須賀美術館も開館3年目を迎えて、アクセスや、冬季の不振など、いろんな課題が出てきている。その中で、前年度までは10万人を達成しているが、先行きは楽観できない状態であることは確か。しかし、当面は10万人を目標値として掲げていきたい。 もう何年かして、目標が現実的でなくなる、あるいは容易に達成し続けるという状態になったときに、評価委員会の場で議論をしていただいたうえで、修正していくべきものではないかと考えている。
[松﨑委員]
油壺マリンパークの場合は年間30万人が目標だが、毎年もう少しというところで届かない。しかし、昭和40年代には60万人いた。そうすると、やはり目標を30万人としないと、会社からの評価が得られない。 横須賀美術館の状況では、実績が目標を上回ったのだから、次は実績より高い目標を設定しないと、辻褄が合わないのではないか?
[小林委員長]
一般企業ならば、目標を達成できなければ廃止も含めた議論になる。 これに対して行政は、必要なものならば、赤字でもやらなくてはならない。そのために、自己点検や自己評価に取り組んで、今は(制度が)ないから模索している状態。

(評価の示し方について)
[小林委員長]
ABCの指標についても、Aは成功したとか、Bは現状維持だとか、Cは定めたよりも足りなかったとか、基準を明確にすべき。客観性のある基準を見つけることはなかなか難しいとは思うが。
[事務局]
ABCの基準については、凡例として明確に記述する。 改善率を目標にするのもひとつの手法だが、前が極端に低値であるとうまくいかない。微減でもC評価となってしまう、というようなことになる。だから、指標によってやり方を工夫する必要もあるかもしれない。今回は、数値と、絶対的な満足度でとらえたということ。

(評価の目的)
[小林委員長]
美術館とはこうあるべき、という一般的な基準があるわけではないから難しい。大学には設置基準があって、評価をする際にはその点をチェックしていけばよい。大学基準局や、(独)大学評価・学位授与機構が、第三者機関となって基準を設定している。 この評価委員会はそれとは違い、少しでもいい美術館を作ろうという考えから、自主的に針のむしろに乗ろうということなのだから、そうした意図を明確にすべき。 序論が長くなるが、今回提示された基準は、概念の裏付けがあやふやに見えてしまっていることが問題。むしろ美術館としてどう考えているか明確にしなければ。 年間観覧者10万人は計画段階の目標だ、というなら、どういう計画であったのか、類似施設の現実的な数字を根拠にしていて、立地性などの要素は度外視して目標とする、ということなどを明記する。また、その目標を堅持する期間について、5年なら5年とする。 そのなかで評価基準の設定は、努力が必要な高いものにする。そのように基準設定について悩んでいるなら、むしろそういうことを盛り込めば、わかりやすくなるのではないか。
[山梨委員]
一次評価書の案に、この評価がなんのためにあるか、ということについての記述が欠落している。市民に公開していくときに、これではわからない。 何のための評価か。どんな方向で評価をするのか、という説明。評価や数値目標、数値でない目標が「何」を基準にしているのか、ということについての、項目ごとの説明をきちんとした上で、それに対応するコメントをつけるという意識でやらないといけない。
[事務局]
ご指摘のように、それぞれの項目について、それを評価の対象とすることの意図については、記述の至らないところがある。今後1次評価書をつくるなかで是正したい。 総体の状況把握については、1次評価書の前段につける予定。

(アンケートの方法について)
[小林委員長]
この案では、来館者アンケートのデータから考えているから、ちょっと意地悪い人が多く来たら、すぐに基準が変わってしまうのではないか? アンケートの設置場所を工夫して、回収する数が多くなれば、結果も変わってくるはず。現状では設置場所がわかりにくいように思うし、答える人も多くないのでは?そういう状況だと、せっかく努力してもなかなかアンケートの結果につながってこない。
[事務局]
アンケートの方法については、前の委員にご指導をいただいて、設置式だけではなく、無作為に配布して書いていただくことをしている。こうすると、特に不満もなくそのまま帰ろうとする多くの方々の意見も聞かれる。そのほうがサンプル調査としては正確。また数が多いほうが正確なので、ひとつの企画展について200程度を目標に集めるようにしている。
[佐倉委員]
アンケートに答えたことがないので用紙を見たい。 できれば、来館者のすべてを対象としたほうがよい。企画展に対する意見、今後の企画への要望を集められるようなアンケートとすべき。 答えてくれた人にシールを渡したり、工夫すると回収率が上がるのではないか。 「みんなの美術館」にするためには、アンケートなどを通じていろいろなアイデアを受け取れるようにしたほうがよい。
[小林委員長]
アンケートをもとに評価基準を書くのだから、重要。この美術館にとってプラスになるようなアンケートのあり方を考えるべき。 項目はあまり多いと答える人が疲れてしまうので、そうならないよう工夫をする。 設置場所はわかりやすく、気楽に感想が書けるようにする。
[松﨑委員]
基本的な手法として、リピーターと、一過性の方を分けると面白い。リピーターの方は、ファンだろうと思っていると、アンケートでは厳しい。細かいことまでいろいろと指摘される。たまたま観音崎に来て、美術館に入ったという人はたいていオールAにするのではないか。経験上そう思う。
[山梨委員]
好きだからアラも見える、ということ?
[松﨑委員]
おそらく。しかし美術館では、まだリピーターを捕まえるのは難しいかもしれない。

(評価委員会の役割について)
[菊池委員]
評価委員会は、召集をかけられたときに、資料に基づいて判断をせざるを得ないのだが。本来ならば、結果ではなくプロセスを評価すべきではないか。 例えば観覧者数も、数字だけではなくて、来館者のモチベーションがどう変化しているかといったことも把握しようとしているのか。そのためにどういう努力をしたのか。 一般企業であれば、目標に向かってあらゆる努力を重ねたが、最終的に駄目だった、ということは許されない。数値目標というのはそのためにある。 取り組みが終わってから、こういう結果でした、数字の増減で評価してください、といわれてもできない。 PDCAサイクルの中で、C(チェック)は、委員会に任されている部分があるが、実は美術館の内部の人による日々の検証が必要。それが結果として数値に現れた、という(形の一次評価)が自然ではないか。評価委員が見たときに、どのように努力したのか、ということが現れていないと、結果としての数値が良いのか悪いのかは評価できない。

(アクセス満足度について)
[菊池委員]
昨年3月に横浜横須賀道路が馬堀海岸ICまで全線開通し、観音崎への交通アクセスが向上した。ここでいう「アクセス満足度」も82.9%と良くなった、という記述がある一方で、「交通の便が良くない」とも書いてある。こういう変化が来館者の満足にどう反映されているのかということについての、日々の分析が必要。
[菊池委員]
「アクセス満足度」といってもアクセスの方法にもいろいろあるので、公共(交通)機関を利用した人も82.9%なのか。どういう手段を使う人に不満があって、それに対するケアをどうしたかによって、それが数値としてあらわれてくるのではないか。
[松﨑委員]
参考までに、観音崎ホテルではアクセスに対する不満は非常に多い。こちらで83%近い数字が出ているのは信じがたい。

(パブリシティの状況について)
[菊池委員]
「パブリシティの状況」は「雑誌・新聞からの認知率」で表されているが、それだけでいいのか?他にどんな手段があり、どれだけの割合だったか。今年こんな努力をして、結果パブリシティが増えたのかどうか、という検証が必要。

(レストランについて)
[小林委員長]
レストランは、時間帯によっては、席が空いているように見えても入れてくれなかったりするのは印象が悪い。 アンケートに頼っているから、いくら100%のつもりでサービスをしても、タイミングによっても左右されてしまう。
[山梨委員]
評価報告書の試行案のなかで、レストランについて「接客の工夫によって改善をはかってほしい」と書いてあるが、レストランと美術館の関係はどうなっているのか?美術館が指示を出せる立場ではないのか?
[事務局]
レストランおよびショップは美術館の施設内で営業しているテナントのようなもので、経営主体はまったく別。アンケートからのご意見などについては、月に一回打合せをして要望として伝えている。
[小林委員長]
市民から見れば、レストランは美術館と一体のものと考えられているはず。「改善をはかってほしい」というのでは消極的に聞こえる。美術館として目標を定めて、一体となってそれに向かって努力をすること。
[事務局]
他人事のような記述については訂正する。
[水島委員]
レストランに対する評価や、改善の提案を反映させるために、美術館側がレストランに対して精査できる?現在の業者の更迭も選択肢として考えられるのか?
[事務局]
基本は一年契約なので、制度として変更は可能。不可能ではない。ただ、実際に変えるとすると、空白の期間が発生するため、実際には難しい。
[水島委員]
サービス向上のための評価というならば、そういう選択肢もあったうえでのレストランへの対応が必要ではないか。
[事務局]
具体例を申せば、予約のために、席が空いているようでも案内してくれない件。従前は予約があると入れなかったが、現在は、土日のランチタイムは予約はとらず、完全に先着順にしている。 ランチの値段についても、以前よりも廉価なものを提供している。美術館からの要望に対して、レストランなりに改善を考えている。
[山梨委員]
美術館とレストランが協議して改善に努めている、ということがわかるように書かなくてはいけない。でなければ自己を積極的に評価していることにならない。外へ訴えかける力が弱くなってしまう。

(周辺施設との協力)
[菊池委員]
観音崎公園への滞在時間について。ここまで、この美術館が役割を担わなくてはいけないのか疑問。むしろ、「この美術館以外にどこに行かれますか?」という問いを設けて、横須賀美術館を起点として周辺のどういう施設が利用されているか、ということを知るべき。
[事務局]
すばらしい立地条件があるがゆえに、来館者の目的が美術館にあるのか、観音崎全体を楽しむことにあるのか、全体的な傾向を知りたいために設けた。立地条件と美術館の性格づけとの関連についても知りたい。
[菊池委員]
それはわかるが、評価に入れるべきものなのか?参考程度ならよいが、ここに盛り込むのにはふさわしくない。
[事務局]
美術館の努力と結果との因果関係が説明しにくいかもしれない。
[小林委員長]
個人的に美術館を利用するときに、駐車場が高いので、ホテルで食事をして、車を置いてくるようなことがよくある。地域のタイアップも大切ではないか。 単にアンケートで観測するだけではなくて、努力目標を掲げると、項目の意味が変わってくる。
[菊池委員]
ホテルで、横須賀美術館を利用した方にアンケートすると、率直な意見が出るかもしれない。
[佐倉委員]
こちらで配っているブルーの地図(「横須賀美術館おたのしみマップ」)は、この周辺のことがとてもよくわかって、初めての方にもわかりやすいと思う。ただ、地図だけではなくて、さらに周辺施設の割引クーポンを兼ねるなどの工夫を加えてはどうか?
[事務局]
部分的には実施している。観音崎ホテルのスパの2割引の券を出してもらったり、京急のきっぷつきの割引券もやっている。
[佐倉委員]
宣伝がたりないのでは?広報よこすかのなかでも、もっと目に付く場所に美術館情報として掲載してほしい。
[松﨑委員]
京浜急行の品川駅の下りホームにも、横須賀美術館の大きい看板を設置している(など、京浜急行とも連携して広報活動をしている)。
[佐倉委員]
「軍港めぐり」のような船便も活用したらよい。
[松﨑委員]
(経営的に)なかなか難しい。バスツアーなどと連動させれば可能性はある。

(一次評価書の書式について)
[菊池委員]
一次評価書の書式について、まず「客観的な分析」があり、そのときに「改善したことはなにか」ということ、さらに「課題はなんなのか」ということを、それぞれの項目ごとに明確にすると評価がしやすいと思う。
[小林委員長]
前段では、9つの目標について、設定した理由について記述する。各項目については、現状と改善点、結果、課題というように整理するとよい。
[事務局]
そのように修正したい。

(二次評価の書き方について)
[小林委員長]
評価委員による二次評価の書き方についても、例えば箇条書きにせよ、などの指示があればあとで整理しやすいのでは?
[事務局]
そのようにしていただければありがたい。
[小林委員長]
委員各位は二次評価の記述について、できるだけ簡潔に、短文で整理するよう心がけていただきたい。
[杉戸委員]
学校でも、生徒の評価や、自分の授業の振り返り評価をしているが、その際も説明責任を問われる。ただ、アンケート結果などの数値だけではなくて、どんな努力をしたか、という「過程」の評価が今後につながっていくと思う。ABC評価によるまとめは、たしかにわかりやすいが、その裏で見えなくなってしまっているものもあるのではないか。そういう部分に関しては、ABCではない記述による評価としてもよいと思う。
[小林委員長]
ABCによる評価がふさわしくない、というご判断があれば、それをコメントとして書き添えていただく、ということではいかがか。
[山梨委員]
いいと思う。

(運営形態の見直しについて【提案2】)
[事務局]
横須賀市全体が財政的な危機にさらされている。美術館のみならず、横須賀市の公設の施設は効率的な運営を求められており、市議会でも指摘がある。これを受けて、22年度から評価委員会のなかで、美術館の運営のあり方についても検討していただきたい。 現在は横須賀美術館は市の直営であり、基本的に市の職員が働いている。横須賀美術館として直営が良いのか、あるいは他の運営形態がいいのかということを含めて、ご検討いただけないか。 その場合、委員会の開催は来年度予定の3回では不足となる可能性がある。事務局では今後検討して、来年度第1回の委員会で開催回数についても提案するつもりである。
[小林委員長]
今までの評価委員としての役割に加えて、運営や経営に関する問題についても検討せよという事務局からの提案。いま世の中は「仕分け」だとか、育てるべきものが、合理的なものさしではかられようとしている現実があり、横須賀美術館も同じような課題に直面しているのだと思う。委員長としては、委員各位がよろしければ、検討課題としてもよいと思うが、当初委嘱された課題よりも立ち入った問題にかかわることになる。
[山梨委員]
具体的に、指定管理者導入の可否が焦点になっているのか?つまり市として導入を検討しているのか。
[事務局]
つい一週間ほど前の議会でも、ひとつの選択肢として検討すると市長が答弁しており、事務局としては当然検討していく。評価委員会の場でも、可否を含めて(検討してほしい)。導入が決まっているわけではない。 全国に公立美術館が約200あるなかで、指定管理は現在約50あるというが、直営から指定管理になった例はほとんどない。財団等に委託していたものが、業務ができなくなって指定管理としたところが多いと聞いている。 今後の検討状況については今後も逐一報告する。 効率的になることはよいが、将来も含めて、全体としてよいことかどうかを含めて、ご検討いただきたい。指定管理以外の手法もあるかもしれない。
[山梨委員]
決まっているか、ではなくて、指定管理者制度を念頭に置いて検討せよと、美術館がいわれて、それを受けて、評価委員会をその検討の場にしようとしているのか。
[事務局]
その通り。

(「経営的評価」の導入について【提案1】)
美術館も、観覧料を徴収して運営している施設である以上、経営的な視点が必要であり、費用対効果を考えるべき局面にきている。開館から3年経ち、当初の構想と現実との齟齬も明らかになりつつある。例えば、開館日数、開館時間、職員の人員配置、財務状況など、経営的な部分についても、今後評価項目として加えてもよろしいかうかがいたい。 休館日が基本的に月1回のみだが、これは、全国的に見ても非常に珍しい設定であり、展示替えの際にも開館している状態。建物の構造上、作業の際の騒音が響いてしまうなど不都合が多く、お客様からも不満が出ている。 通常は6時まで、6月から9月の間の土曜日は8時まで開館しているが、夜間の来館者はごく少ない。しかし開館している以上は通常通り人員配置しなくてはならない。これがはたして効率的な運営といえるのか。こういったことについても検討項目に加えたい。

(評価制度、評価委員会のあり方と「提案」の関係性について)
[山梨委員]
「運営についての検討」というのは、指定管理者制度だけではなくて、委員会の役割として追加された項目の中にも「検討」がある?つまり、「評価」だけでなく、開館時間をどうするか、といったことを美術館といっしょに考える、という役割もある?
[事務局]
明確に分けるのは難しい。「効率的な運用」を考えていく場合、運営形態もそのひとつ。(開館)時間や、開館日数の問題も関係がある。 【提案1】は、「経営的な視点」を評価項目に付け加えたい、という提案であり、【提案2】は、これとは別に運営形態について検討していただきたい、ということ。
[山梨委員]
それはわかっている。もし要求が「評価」の枠内であれば、運営(という項目)が加わったとしても、他の項目と同じように評価する、という役割が明確である。 これに加え、運営に関することを検討せよ、というなら、評価委員会が言ったことは運営に反映されていくのか?もしそうなら、評価委員会の指摘が強制力を持つことになり、評価(制度)全体のありかたが変わってしまう。
[事務局]
どんな結論、経過になるかわからないが、評価委員会の役割に加えていただきたい。市の決定機関があるので、プロセスを踏まなくてはならないが、いただいた結論は評価委員会の意見として真摯に受け止め、改善、修正に活かしたい。
[山梨委員]
いつするつもりなのか。
[事務局]
二次評価を反映するプロセスについては、前回話したとおりで、これについてもそれに準ずる。山梨委員は位置づけの問題を提示していると思われるが、今の時点では制度上の縛りはない。
[山梨委員]
しかし、評価(制度)に関しては、いちど整理したはず。課題を追加するならば、規定の枠にどう組み込まれるのか整理すべき。今のままでは混乱する。
[菊池委員]
同意。運営評価と結果評価とは全然別のもの。運営上のことは、プロセスを詳細に見て、ニーズを把握しながら意見を入れ、それを反映することができなければいけない。そうでなく定点的に見て、どうこう意見をいうことは逆に非常に危険。 常に状況を細かく把握しながら修正、検討を繰り返すようなワーキングチームをつくることができればよいかもしれないが、この少人数の中ではイメージがわかない。委員会を4回、5回と増やしても解決しない。
[山梨委員]
具体的に指定管理者制度を美術館に導入した場合に、美術館がどうなるか、ということについて、委員各位はじゅうぶんな情報を持っていないと思う。
[水島委員]
ここでできるような問題ではない。
[山梨委員]
【提案2】は「評価」ではない。指定管理者制度が美術館に向いているのかどうか。現行の指定管理者制度をどう修正すれば、うまく利用できるのか。それらを検討したうえで、適していない、という結論を導きたいのではないか。評価委員会の意見がどれだけ効力があるかは別として。
[事務局]
指定管理者制度には限定していないが、それを含めてどのような運営形態があるのか、ということを説明するだけでも相当の時間がかかるとは認識している。しかし、美術館はどうあるべきかという問題と、評価制度は表裏、不即不離の関係にある。開催回数が増えてご足労をかけるが、お願いしたい。 運営形態によるメリット、デメリットについては、理解しやすいよう並列的に整理して示したい。
[菊池委員]
もう一度確認。指定管理者制度を見据えてやる、ということ? 「運営」という項目をこの中に付け加える、ということならば(この委員会で担当する)可能性はあると感じていた。しかし、指定管理者制度への移行を視野に入れて、いかにソフトランディングさせるか考える、というのはまったく別の問題。 そこをはっきりさせなければ、簡単には請け負えない。というより、(委員会の権限がはっきりしないので)何を言えばいいのかわからない。
[小林委員長]
この委員会では、美術館とは本来的にどういうものか、ということを考えてきた。たとえば、市民のための美術館なら、市民に対してどんな意味のサービスができるのか。そのために、多方面の方の意見を集めて、具体的な改善につなげようとしてきた。 開館日や人員削減となると別問題であり、純粋な気持ちで参加した各委員は戸惑っている。 私の基本的な意見を言えば、指定管理者制度を採ることには問題が多いと考えている。つくってはみたが、(財政上)うまくいかないから民間に任せるというのでは、市民サービスとして行政でなければ手を伸ばせない部分が合理化されてしまう。 菊池委員の指摘は、美術館の本来のありかたを探ることがこの委員会の責務であって、支出の多いことは大変だが、それが市民の心を豊かにすることにつながっている。 社会福祉事業も重要だが、それ以前の心のケア、感性を育てる仕事も必要ではないか、という議論ならばできる、ということでよろしいか? 委員一同:同意。
[小林委員長]
そうすると、おのずと回答は、(指定管理者制度を含む運営形態の見直しという議論は)、経営的、合理的な意味で(あって)、好ましくないという結論にいたる。おそらく、委員各位の思いは、特にこの美術館は、批判もあるからこそ、大事にしたい、というところにあるだろう。 美術館の本質について、1年や2年でなく、4年、5年をかけて検討してはどうか。 いまの段階で、理念を通り越して、数値目標について議論しているのもいかがかと思うくらいだが、それも、存続させたいという気持ちからだと思う。本質論を踏まえながらも、経営について考えているのも、財政面からの批判を乗り切ろうという意味の議論だろう。 この委員会では、指定管理者制度への移行を前提とするのではなくて、あくまでも、美術館を行政自ら行うことの意味を模索する。そのために、支出をどう埋め合わせていくのかという部分を議論する。事務局の提案についてはこのような回答でいかがだろうか。
[事務局]
ごもっともな意見だと思う。 ひとついえば、「指定管理者制度へのソフトランディングをはかりたい。」との意識は持っていない。美術館としてどういう運営形態が望ましいのか検討していただきたい、という提案だった。 そのなかで、公立の美術館としてなにを提供するのか、その効率性の話ならできる、というのはまったく同意。 したがって、提案1について、委員長の規定された視点での評価を加えることでご了解いただきたい。 提案2については、即答できないが、ご意見を承った。
[小林委員長]
勇み足だっただろうか?
[山梨委員]
委員長の指摘は正確だと思う。 美術館がある理念をもって、その方向を目指して活動していく、ここについてはよくできた、ここはまだだめだ、というように自己評価して、評価委員会にはかる。 評価委員会は美術館の「外」にいて、美術館に関する理念は個人的にそれぞれ違うけれども、その理念を基準にして評価をする。それをぶつけあって、将来的な活動にいかしていく。それが評価委員会の役割だと思う。 運営に関することは「外」に出ない。評価委員会は本来「外」にいるべきなのに、これを距離はあるけれども、「中」のものと見なして、この内部的なことについて検討してほしい、といわれている。しかしそれをいっしょにやってしまうと、その距離が狂ってきて、評価委員としての独立性というと大げさだが、そういうスタンスが失われてゆくと思う。その見方の有効性の性格が変わってしまう。有効でなくなるわけではないが。 多くの美術館には運営委員会がある。運営委員会というのも、理想的な運営形態を検討する委員会ではないが、そのような性格を付与した別組織をあらためて作られたほうがよいのでは?手間も経費もかかるけれど。
[事務局]
委員会のご意見として承った。 別組織がベターであるとは正直考えていた。しかし、いろいろな委員会があるとわかりにくくなるということもある。
[小林委員長]
この委員会としては、あくまでも、公立美術館として発足したこの美術館を、厳しい財政状況のなかでもきちんと活動し、経営が成り立つ手立てはないものか、というところに「想い」がある。運営形態の改変によって解決しようとするやり方とは、「想い」の違いが、あまりにも大きい。今の時代だからこそ、叡智を出しあって、観覧者数の問題や、横須賀に美術館のあることの意義について市民の理解を得て、実際に成り立つかたちをつくるべき。外へ出したとしても、黒字になるわけではない。「合理化」して、少しの経費を浮かせた代償として、非常に大きなものを失うことになりかねない。美術館とはなにか、どうあるべきかという本質論について、もう少しきちんと考えさせてもらえないか、というのがこの委員会としての結論としてよいか。
[委員一同]
同意。

(閉会)

[事務局]
今後について、ご意見をたくさんいただいたので、スケジュールが後ろへずれるかもしれないが、基本的には先ほど説明したように進めたい。
【提案2】について、新たな組織の立ち上げも含めて検討する。
【提案1】について、来年度から検討いただく項目に加えたい。